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2022年11月09日22:58

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映画日記『裸のムラ』

2022年11月9日(水)

『裸のムラ』(2022年)
監督:五百旗頭幸男
今池・名古屋シネマテーク

映画が始まってしばらく、何の映画なのかよく分からなかった。
『裸のムラ』というタイトルから、日本の地方政治の「ムラ社会」ぶりを面白おかしく批判する映画だろうとおもっていた。
ところが、序盤から「バンライファー」という、車のバンで生活と仕事をこなしながら、ときには日本各地を移動するという、いわば日本版のノマドみたいな人たちや、インドネシアの女性との結婚を機にイスラム教に改宗した男性の家族が登場して面食らう。
それでも序盤を過ぎるあたりから、舞台となる石川県の長期にわたる保守系県政のよどみが姿をあらわしてくる。
28年にわたって石川県に君臨してきた傲慢な知事、それに輪を掛けて傲慢な地元出身の元総理、その元総理の茶坊主にしかみえない元プロレスラーの新知事。
いずれも、「これからは女性が活躍する時代だ」みたいな発言をするが口先だけ。
どこまでいっても、黒いスーツ姿の男たちが群れる、男中心のムラ社会だ。
新旧ふたりの知事のために、県議会(とおもわれる)の女子職員が懇切丁寧に水差しとコップをぬぐうシーンが二度出てくる。
一度目は、水差しひとつになんと大仰なことかとおもったが、二度目になると無性に腹が立ってきた。
飲むかどうかもわからない一杯の水のために、人知れず立ち働く女性の姿を、ふたりの知事は見たことがあるのだろうか。
知事がペットボトル1本持参すればすむことだ。

しかしだ、盤石とおもわれる男中心のムラ社会、それは石川県だけでなく日本のことでもあるが、その周辺では少しずつ変化が起きている。
バンライファーのように変化するライフスタイル、本作では言及されていないがジェンダーの問題、そして移民と宗教などなど、これからの政治は多様化していく社会に根気よくひとつひとつ取り組んでいく必要があるとおもう。
フレデリック・ワイズマン監督の『ボストン市庁舎』(2020)を見れば一目瞭然だ。

バンライファーのお父さんが、娘さんになかばむりやりにパソコンで日記を書かせていた。
娘さんとしては、毎日の日記が重荷みたい。
それでも、毎日日記を書いてるせいか、ものすごいスピードでキーボードを打っていた。
お父さんが、そんな娘さんに向かって「こんどは英語だな」とつぶやく。
言われた娘さんが、「えっ」と嫌な顔をしてエンドになった。
ひとりの女性が、男たちのムラ社会と、変化していく世の中を生き抜いていくためには、それなりのスキルが必要なのかもしれない。



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