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2022年02月28日21:33

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映画日記『愛なのに』

出典先が定かでないので真偽のほどは分らないが、日本映画が世界に誇る名作『浮雲』(1955)における、高峰秀子と森雅之の底知れない腐れ縁の要因は何だったのか?という問いに、監督の成瀬巳喜男はこう答えたという。

「きっと、からだの相性が良かったんでしょうね」


2022年2月28日(月)

『愛なのに』(2022年)
監督:城定秀夫
矢場町・センチュリーシネマ

まもなく31歳になろうとする古本屋の主人・多田(瀬戸康史)にしつこく求婚を迫る16歳の女子高生・岬(河合優実)、ところが多田は今もアルバイト時代に一度だけコクったことのある一花(いちか/さとうほなみ)のことが忘れられずにいたのだが、その一花、イケメンサラリーマンの亮介(中島歩)と結婚を控え、挙式の準備に忙しい日々を送っていたのだが、イケメン亮介のほうといえばこともあろうに、ふたりの結婚式を仕切るブライダルプランナーの美樹(向里憂香)とラブホテルでベッドをともにする仲になっており・・・・

先日見た『夕方のおともだち』同様、女と男のグダグダとした話。
しかし、あらためて考えると、女と男のグダグダとした話というのは、成瀬巳喜男や多くの日活ロマンポルノなどを通じて、日本映画が描いてきた伝統芸であることに気づいた。
と、偉そうに書いてはみたものの、恋愛体験に乏しいので冒頭の成瀬監督の言葉を含めどこまで理解しているのか、いささか心もとないのだが。

恋愛体験には乏しいが、普通の人より映画を見てるので、本作が映画としての面白さに溢れていることは十二分に理解できる。
面白さの第一がその作劇。
途中で、なんとなくモヤモヤする気分になるのだが、そうきたか!!というドンデン返しがあって、大爆笑だった。
そう、本作はコメディ。
面白さの第二がコメディであること。
昨年の『いとみち』、『まともじゃないのは君も一緒』、『街の上で』、『子供はわかってあげない』に続く、安易な泣きに走ることのない良質のコメディだ。
面白さの第三が、登場する俳優たちの好演。
あらすじ紹介に名前を載せた5名、いずれもが見るべきものがあった。
あえて、そのうちの二人をあげる。
ひとりは、中年男に血道をあげてしまうという奇っ怪な女子高生に扮した河合美優。
かすかな目の動きで、微妙な感情の起伏を演じて見せた。
『喜劇 愛妻物語』(2020)の香川のうどん娘から、昨年の『由宇子の天秤』を経て、本作で一気に若手女優のてっぺんに駆け上がった。
もうひとりが、イケメンサラリーマンに扮した中島歩。
『いとみち』ではメイド喫茶のイケメンマスター、『偶然と想像』では古川琴音と玄理から愛されるというイケメン起業家、少し前の斎藤工を彷彿とするイケメンぶり。
イケメン、イケメンと書いたが、彼のくどいくらいのイケメンぶりが本作のキモであったことには間違いない。
今年が始まってまだふた月しか経ってないが、上半期日本映画の助演男優賞は中島歩で決まりだ!!
そして、俳優ではないがときおり登場する猫ちゃんが、いい味を出していた。
はっきり言って、猫ちゃんがいなくてもストーリーは進んで行く。
しかし、猫ちゃんがいなければ、本作は画竜点睛を欠くことなる。
猫ちゃんの存在が、『愛なのに』という1本の映画の世界を、とても豊かなものにしていた。

傑作!!


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