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2022年02月12日23:17

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映画日記『黒い司法 0%からの奇跡』

2022年2月12日(土)

『黒い司法 0%からの奇跡』(2020年)
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
ムービー・プラス

実話にもとづく映画。
ときは1980年代のころ。ハーバード大学出の黒人エリート弁護士ブライアンは、アラバマ州で受刑者の人権擁護活動に参画することになった。
そんな彼が、白人の少女殺しの犯人として、死刑囚檻房に収監されている黒人のジョニー・Dと面会する。
取り付く島もないジョニー・Dの態度にブライアンはいぶかった。
これまでの弁護人は誰ひとり、ジョニー・Dの主張に耳を貸そうとしなかったのだ。
ブライアンは、すぐさま彼の事件を洗い直した。
すると、そこには黒人に対する予断と偏見に満ちた取り調べ、さらには物的証拠はなにひとつなく、司法取引とおもわれる白人男性の証言があるにすぎなかった。
ブライアンは確信する。
この事件は、冤罪だ・・・・

力作!!
劇中に、舞台となる地が『アラバマ物語』(1962)の舞台でもあり、その記念館が住民たちの自慢だというシーンが出てきた。
『アラバマ物語』も、差別と偏見のなかで黒人青年が蒙った冤罪を、白人弁護士が晴らそうとする物語だった。いわば、アメリカの良心を謳う作品だ。
しかし、たとえ『アラバマ物語』の記念館があったとしても、その時代からすでに20年以上経っているのに、何も変わっていないではないかという苛立ちが画面に漂う。
黒人への差別と偏見に異議申し立てをするアメリカ映画を、日本人の私でさえ数多く見てきた。
それなのに、アメリカの人種差別はなくならない。
ついつい映画は無力なのかと思ってしまうが、それは本作を含め、演者や作り手たちに失礼なことだ。
映画1本で世の中がガラリと変わるわけがない。
要は、しつこく異議申し立てを続けること。
しつこく続けることが、事態の悪化を防ぐことになり、ほんの少しではあるが前進することになる。
私が知ってる範囲のことになるが、シドニー・ポワチエから始まり、モーガン・フリーマンやデンゼル・ワシントン、マハーシャラ・アリ、オクタヴィア・スペンサーなどなど、アメリカの多くのアフリカ系俳優たちが、さまざまな役を通じて、映画による異議申し立ての行進に参加してきた。
行進は、きっと幾世代にもわたって続いていくはずだ。
その行進の中に、本作の弁護士ブライアン役のマイケル・B・ジョーダンと、ジョニー・D役のジェイミー・フォックスも加わることになった。

マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスの力演が見どころではあるが、もうひとり、司法取引で偽証をしてしまうプアな白人を演じたティム・ブレイク・ネルソンの哀れさが印象に残る。
白人にも弱者がいるという、もうひとつの視座を与えたティム・ブレイク・ネルソンの存在が、本作に深みを持たせていたとおもう。



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