いくつかの女流アーティストを追いかけてみた。
1人は著名な、1人は最近知ったばかりの、そして2人はあまり記憶に残らないまま。
《蝙蝠/滝沢汀展》(ギャラリーコンセプト21)
まずは表参道。裏道を行ったり来たりしている途中に気になるギャラリーが1つ。
3度目に前を通ると、廊主さんからお声が掛かり「寄っといで」と、まるで飛田新地のちょんの間のように。知らんけど。
ギャラリーには作家さん本人も在廊中で、かなりの間、貸切で解説を受けた。
ご自身の名前『汀(みぎわ)』が、あちらとこちらの境界を行ったり来たりするような意味だから、コウモリに親しみを湧いて題材にしたようだ。
哺乳類なのか、鳥類なのか。どっちつかずの代名詞としては、いささか悪い意味でメタファーされるけど、作家さんはもはや魅入られたように、コウモリから抱く「BAT」なイメージをアートに落とし込む。
まるで村上春樹の小説を読んでいるかのような、あちらの世界の幻想的な解説は、かなり難しいものだったけどいい経験になったかな。
『うつろひ』(宮脇愛子)
スパイラルに作品があることを知ってはいたものの、鑑賞する機会に恵まれていなかった。ホール開館中でないと、3階ロビーへ立ち入りはできないものだが、もはや怖いものはない。行ってしまえ。
茶筅をひっくり返したかのような(略)
大雑把な作りではあるけれど、246号線に庇を貸すように浮かんでいる。
磯崎新建築に宮脇愛子の真鍮彫刻がシンクロするけど、槇文彦作品にもひっそりと良く似合う。
《藤田道子 ほどく前提で結ぶ』(茅ヶ崎市美術館)
場所を湘南に移し、東海道線ホームの発車サインに流れるのはSAS『希望の轍』
神奈川県内の市立美術館にあっては、とても静謐な公園の丘に佇むレイア―の高い館。
上野VACA展で初見のアーチストだけど、エントランスで見つけた『Sunlight and Space』を一目見ただけで、本展覧会の評価は定まった。
何といってもタイトルが秀逸。《ほどく前提で結ぶ》。
おそらくそのタイトルピースが、1階から地下へと続くリボンたち。
茅ヶ崎市民の引き出しにしまわれていたケーキ屋さんやデパート、ブティックのリボンを、一体、どのぐらいの本数を「ほどく前提で結んだ」のか。
キュレーターに尋ねた答えは「いくつかは結んだものをお持ちになったけど、展示室へ飾る中で結び直しは幾つもあった

」。
インスタレーションは、常にそのように作られていく。
布にカラースタンプを施し、円や三角に切り抜いてパッチワークで副次的な作品を創り上げている。
例えば、小学校の家庭科の教師でさえも、この作品の難しさに驚嘆することができるほど、緻密で精緻なハンドメイドアート。
最終展示室に揺れる絹糸を連ねたモービルたち。
鑑賞者の動きによって起こされた風は、作品の向きを変え、色彩すら移ろいとなる。
藤田道子女史41歳、なかなか見応えあり。
どうしても気になることがあったので、かなり図々しいことだけど、鑑賞後に学芸員さんを指名した。

「VOCAで観た『Pink to Yellow』がありましたけど、瓶が見当たりません

」

「ここでは外してしまいました

」
栞には「瓶」と記してあったけど、どうやらそんなことに気が付く人はいるわけない。という判断だったのかもしれない。残念ながら、気が付いた
学芸員さんのレモン色のマスクは展覧会に合わせたイメージだった。
曰く、
「内藤礼さんのようなキリキリした感じはないですが、雰囲気はありますね」
ベストストライクな鑑賞眼
妻有や市原の芸術祭に出ても遜色ないポジションを得る作家であろう。
その意見に学芸員さんも同調してくれる。時間があれば、彼女とはあと1時間話せるぞ。
(時間はない)
呑気な美術館はしごの合い間に、平塚球場傍の温泉に浸かり、ひらめ筋を和らげる。
至福
女流作家4人目は《宮川慶子展》at 平塚市美術館。
年に何度か企画されるロビーに作品を置くだけのフリー彫刻展。
動物主体の彫刻作品だけど、少々気味の悪さが目立ちすぎて、同じ美術館内に常設されている佐藤忠良や舟越保武の美しい人物とは相容れない。
ましてや、ここはエントランスに、三沢厚彦巨匠の堂々とした一角獣2体。
対峙するには無理がある。次回に期待。

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