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2020年06月08日22:02

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映画日記『ルース・エドガー』

2020年6月8日(月)

『ルース・エドガー』(2020年)
監督:ジュリアス・オナー
矢場町・センチュリーシネマ

主人公のルースは、子どもの頃に、アフリカの戦火の地から養子としてアメリカにやってきた。
ルースは白人の養父母のもとですくすくと育ち、いまは高校の優等生になっている。
父兄の前で大人顔負けの感動的なスピーチをこなし、「まるでオバマだな」と揶揄する白人のクラスメイトを、笑顔でいなす。
勉学が優秀なだけでなく、所属する陸上部の白人コーチからも信任が厚い。
誰からも好かれるルースは、養父母にとっても自慢の子だった。
ただひとり、歴史科の女性教師・ウィルソンだけは、ルースに疑念の目を向けるのだった。
そして・・・・

周囲からの過大な期待に反発する青年という意味では、『長距離ランナーの孤独』のようでもあるが、根本的に何かが違うとおもった。
ルースと敵対するウィルソンという女性教師は、ルースと同じアフリカ系だ。
したがって、アフリカ系対白人の対立といった単純な構図ではない。
さらに、紛争地帯からアフリカ系のルースを引き取るほどだから、養父母はきっとリベラル派だ。
アメリカのアフリカ系市民に白人リベラル派という、多くの映画で善玉として描かれることの多い両者が、本作では互いに疑心暗鬼となって、対立することになる。
とにかく、困ったことに本作には敵役となる白人至上主義者が登場しないのだ。
私のような甘ちゃんのなんちゃってリベラルには、ガツンとくる1本。

女教師をオクタヴィア・スペンサー、養父母をナオミ・ワッツとティム・ロス、いずれも好演。
ルースを演じたケルヴィン・ハリソン・Jrが素晴らしい。
養父母を敬愛する完璧な優等生の顔と、知略にたけた悪だくみをする得体の知れなさ、ふたつの顔を、しれっと演じきる。
そして、彼のさわやかなイケメン顔が醜くゆがんでいくラストシーンが、本作をより深いものにした。

かなり変わった映画音楽が、見どころというか聴きどころだった。



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