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2019年05月08日12:08

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映画日記 『男なら夢をみろ』 『美しい庵主さん』 『若い川の流れ』

大阪出張の3日目。
この日は「芦川いづみ映画祭」の固め打ちだ。

2019年5月5日(日)

『男なら夢をみろ』(1959年)
監督:牛原陽一
大阪九条・シネ・ヌーヴォ

石原裕次郎主演のアクション映画。
裕次郎が“明朗快活なやくざの幹部”という、わけの分からない役だ。
やくざの幹部といったって、のちの渡哲也が匕首(あいくち)を振り回すような陰惨なやくざでなく、一件落着になったら、とっとと足を洗うような、ナンチャッテやくざだった。
裕次郎の情婦でダンサー役の女優さんが中原早苗だろうとおもって見てたら、チラシで確認したら清水まゆみだった。
なかなか、そそる女優さんだ。

ということで、芦川いづみが脇にまわった1本。


『美しい庵主さん』(1958年)
監督:西河克己
大阪九条・シネ・ヌーヴォ

個人的には今回の「芦川いづみ映画祭」の目玉。
この1本のために、もう1泊したくらい。
坊主頭になっても、芦川いづみが可愛い。
加えて、まだふっくらしてたころの浅丘ルリ子も登場する。
浅丘ルリ子のファンでもあるので、至れり尽くせりの1本。
ふたり以外の見どころも、ふたりの女優さんだ。

尼寺の庵主役の東山千栄子と、副庵主みたいな役の高橋とよだ。
ふたりの掛け合い漫才が楽しい。
しかし、東山千栄子といえば、『東京物語』(1953年)の印象があまりにも大きい。
本作や前日に見た『春の夜の出来事』の婆やなど、素っ頓狂な役も喜々として演じている。
いっぽう「京マチ子映画祭」では傲慢で底意地の悪い役もこなしていた。
芸域の広さに敬服する。


『若い川の流れ』(1958年)
監督:田坂具隆
大阪九条・シネ・ヌーヴォ

オープニングで、川の清流に「日活」マークがかぶさる。
こんな「日活」マークを見るのは初めだったので、驚いた。
しばらして『若い川の流れ』というタイトルにちなみ、特別に撮った洒落っ気あふれるオープニングと分かった。

ルックスは良いのに、女性に対して野暮天の若いサラリーマンに石原裕次郎。
裕次郎と同じ職場にいる、お局さま一歩手前の先輩(だろうな)OLに北原三枝。
北原三枝と裕次郎、顔を合わせるたびに口喧嘩になるが、ふたりとも秘かに惹かれあっている。
ある日、ふたりが勤める会社の専務から、裕次郎が用事を頼まれ、専務宅へ伺うことになった。
ところが、用事というのは方便で、専務は裕次郎をひとり娘の芦川いづみに引き合わせるために仕組んだのだった。
裕次郎と芦川いづみは、互いの率直さと明朗さに、すぐさま意気投合。
そして、ふたりは急速に親密さを深めていく。
しかし、北原三枝は恋のライバルが登場したにもかかわらず、ふたりを見守ることしかできなかった。そこには深い事情があって・・・・

さっそうとした中に、ちょっと影を潜ませたOLの北原三枝、明るく屈託のないお嬢さまの芦川いづみ、ふたりが下した決断はいかに?
そして、裕次郎は?

ラブコメの傑作。
何度も書くが、1950年代の石原裕次郎はほんとうに良い。
当時、彼の明るさに日本中が熱狂したというのがよく分かる。
本作の芦川いづみは、助演ということになる。
スクリーンの中を快活に飛び跳ねる彼女の明るさが、北原三枝のクールビューティぶりを際立たせることになった。

ひとことで言うと、この映画は、お婿さん探しの映画ともいえる。
お婿さん、あるいはお嫁さんを探しもとめるなかで、北原三枝に芦川いづみに裕次郎、女も男もなんやかやと自分の主張を大声で語り合っていた。
そこには、「結婚は自分たちのもの!」という、力強い宣言がある。

同じ結婚の話でも、小津映画とは印象がまったく異なる。
たとえば『晩春』(1949年)の原節子なぞは、自分たちのために結婚する、というより父親の世間体のために結婚したようなもの。
原節子は自分の主張を押し殺している。
さらに可哀想なのはお婿さん。
自分の主張どころか、結局最後までスクリーンにその姿を映しだしてもらえなかった。
的外れな感想であることは重々承知してるが、日活と松竹とでは、なにか根本的なところが違っていたとおもう。
月並みだが、伝統の松竹に対して、この頃の日活というのは、若い映画会社だったのだろう。

幕間に現在の芦川いづみの肉声メッセージが流れた。
そこで「日活はとてもすばらしい会社だった」という意味の回想をしている。
いまも変わらぬ彼女の日活への愛情は、きっと結婚と同様に「映画は(若い)自分たちのもの!」であったという、幸せな記憶の賜物なのだ。


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