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2019年03月11日00:12

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映画日記 『渡世人』

青春18きっぷを使い、大阪へ日帰り遠征だ。
『大阪ど根性物語 どえらい奴』に続いて、もう1本。

2019年3月9日(土)

『渡世人』(1967年)
監督:佐伯清
大阪新世界・日劇東映

今回の大阪遠征の目玉、梅宮辰夫主演のやくざ映画。
梅宮辰夫が着流しのやくざを演じる。
梅宮辰夫といえば、不良番長や派手な背広姿といった現代劇のイメージが強いので、これは珍しい。
週末は『ローマ/ROMA』の封切りだったが、それよりも梅宮辰夫の着流しが気になってしかたがない。
あきらかに優先順位がおかしいが、『ローマ/ROMA』よりも『渡世人』を見ることにした。
こうなると性(さが)みたいなものだ。

ときは昭和のはじめ、若い代貸の新次郎(梅宮辰夫)は、中国大陸での利権を得ようとする上州の悪徳やくざの藤井(金子信雄)の手によって、親分を暗殺されてしまう。
彼にも刺客が差しむけられたが、返り討ちにした。
しかし、そのために5年の刑をくらってしまう。
組は、もうひとりの代貸・児玉(名和宏)が継ぐことになった。
ところが、児玉は裏で藤井の意を汲み、親分殺しの手引きをしたばかりでなく、新次郎の恋人のお登喜にちょかいを出す始末。
みかねた渡世人の三上(鶴田浩二)が、お登喜を自分が住む上州へ連れていくことになる。
その三上こそが新次郎の親分殺しをおこなった暗殺者ふたり組のひとりだった・・・・

筋立ても面白く、最後まで楽しめた。
お登喜に指一本触れない三上が、沓掛時次郎みたいなのも気に入った点だ。
そして、問題の着流し姿の梅宮辰夫だが、まるで違和感がない。
ラストの殺陣もちゃんとこなしていた。
ただし、若すぎるとおもった。当時29歳だ。
役の上とはいえ、梅宮辰夫が鶴田浩二に向かって、「みかみー」と呼び捨てにする場面に、ヒヤヒヤしてしまった。
結局、彼が主演する着流しやくざ映画は数本しかなかった。
梅宮辰夫の活躍の場は、不良番長シリーズや風俗ものといった、任侠ものをメインにした2本立て興行の、添え物映画だった。
そういった意味では、池玲子や杉本美樹らといっしょに、東映映画の面白さの幅を広げてくれた功労者だ。
なにしろ高倉健に不良番長はできない。

ところでまったくの余談になるが、この日記を書くために、ネットの「日本映画データベース」を眺めてたら、本作の2年前、1965年に梅宮辰夫は『ひも』『いろ』『ダニ』『かも』といった素晴らしいタイトルの主演映画を撮っていた。
まあ、タイトルからおおよそのことは想像できるが、なかでも『ダニ』というのは凄い。
こんなに品のないタイトルも珍しいが、話の本題はタイトル名のことではない。
本題は、『ひも』『いろ』『ダニ』『かも』の音楽を担当していたのが、内藤法美だったことだ。
内藤法美(ないとう・つねみ)といったら、越路吹雪の旦那さんで、作曲やピアニストをしていた人だ。
私の世代では、トワ・エ・モワが歌った「誰もいない海」の作曲者として有名だ。
「日本映画データベース」によると、内藤法美が映画音楽を手がけたのは6本だけだった。
1957年に『サザエさんの青春』が1本。江利チエミの映画だ。
それから8年経った1965年に6本中5本が集中している。
それが『ひも』『いろ』『ダニ』『かも』だった。
もう1本のタイトルも梅宮辰夫主演の『夜の悪女』というから、同じ系統の映画だろう。
梅宮辰夫と内藤法美という組み合わせの妙と、1965年の内藤法美に何があったのか?
興味のあるところだ。
内藤法美の音楽も含め、『ひも』『いろ』『ダニ』『かも』といった、梅宮辰夫のスケコマシ映画をまとめて見たいものだ。

閑話休題。

話を『渡世人』に戻すと、本作の最大の見どころは若山富三郎だ!!!

鶴田浩二の兄弟分ではあるが、金子信雄演じる悪徳やくざの子分でもあるという役だ。
銀縁メガネを神経質そうにつけたり外したりする細かい仕草や、何かあるとすぐさま「殺したろか」と平然と言い放つ。
短絡で暴力的で冷酷な男だ。しかし鶴田浩二には一目置いている。
彼がすることに目をつむることもある。
そんな善と悪の境界線に位置する人物を見事に演じる。
翌年公開の大傑作、『博奕打ち 総長賭博』(1968年)の前哨戦のような名演だった。
ほんとうにうまい。しかも絵になる。感服だ。

『大阪ど根性物語 どえらい奴』に続いて、長文になってしまった。
とにかく、この日は満足度の高い2本だった。
気分がいいので、新世界の串カツ屋で一杯やってから、名古屋へ帰ってきた。


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