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2019年03月10日01:56

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映画日記 『大阪ど根性物語 どえらい奴』

青春18きっぷを使い、大阪へ日帰り遠征だ。

2019年3月9日(土)

『大阪ど根性物語 どえらい奴』(1965年)
監督:鈴木則文
大阪新世界・日劇東映

1954年生まれの私にとって、子どもの頃から葬儀には霊柩車が付きものだった。
大正時代の大阪を舞台に、葬儀業界の因習や伝統を打ち破って、初めて霊柩車を使った葬儀を始めることになった男の物語。

炎天下、火葬場への道を、少年がひとりで父親の亡骸が入った棺桶を乗せた大八車を引いていた。
その場に通りがかった大阪でも有数の葬儀屋駕為の親方・為次郎(曽我廼家明蝶)は、少年を不憫におもい、古式の伝統に則り盛大に毛槍をふるって父親を葬ってあげた。
当時は、火葬場まで仏を乗せた駕篭を、大名行列のように多くの人手を連ね、毛槍をふるいながら練り歩くのが、立派な葬儀とされていた。
これが縁で天涯孤独の少年は篭為の世話になる。
月日が流れ、少年は青年になり篭為の立派な働き手のひとりになっていた。
彼の名は勇造(藤田まこと)。
勇造は少年時代の恩に報いるためだけでなく、いつしか為次郎を父と慕っていた。
律儀な勇造に、為次郎のひとり娘・美津(藤純子)は秘かに恋心を抱いていた。
ある日、勇造に転機が訪れる。
旧友の蜂谷(長門裕之)が運転する、世の中に出回りはじめた車を見て、勇造は「これだ!」と思いつく。
さっそく勇造は車を使っての葬儀を為次郎に申し出た。
しかし伝統を重んじる為次郎は首を縦に振らないばかりか、怒りのあまりに勇造を破門にし、追いだしてしまう。
勇造のあとを追って、美津も身ひとつで篭為を飛び出した。
こうなったら後には引けない。
霊柩車に賭けた勇造と美津の、波瀾万丈の物語がはじまっていく・・・・

初めて見たが、隠れた傑作だ。
なんといっても、藤田まことと藤純子のコンビがいい。
きまじめに藤田まことが霊柩車の話を切り出そうとしたら、てっきりプロポーズだろうと早合点した藤純子が、とたんにでれでれとなるシーンの可愛いことよ。

明治天皇の崩御から大正時代に移り、第一次世界大戦や米騒動、関東大震災などなど、当時の新聞のスチル写真が折々に挿入される。
つまり、本作はひと組の男と女のクロニクルだ。
劇中に、日本がどんどんと戦争に傾いていく当時の世相をオーバーラップさせることにより、単なる人情喜劇にふくらみを持たせることになる。
そういえば、天皇制や軍隊をチクリと皮肉るシーンが出てくる。
鈴木則文監督、そして脚本に参加した中島貞夫の反骨を見た。

大八車を引く勇造少年の姿を望遠レンズで撮ったシーンや、一瞬挿入される汐路章の敬礼ショット、女学生の藤純子が駕篭から降りるとき、若い衆たちがさっと並べたたくさんの草履の中から、さりげなく藤田まことの草履を選んで履くところなど、見事な撮り方だ。
撮り方といえば、藤田まことと藤純子がD・W・グリフィス監督、リリアン・ギッシュ主演の『散りゆく花』の大きな映画看板の前で演じた、のラブシーンも見どころ。
映画好きにはたまらないシーンだった。
余談になるが、自宅に戻ってネットで検索したら、1919年製作の『散りゆく花』が日本で公開されたのは1922年、大正11年のことだった。
当たり前だが、ちゃんと調べたのだろう。
葬儀の歴史についても勉強になった。

とっちゃん坊やみたいな、東宝の名脇役・谷晃が悪役で登場する。
どうして谷晃が出演することになったのか、不思議でならない。

ということで、わずか90分たらずのモノクロ映画に、書き残しておきたいことが満載だ。

続いてもう1本見てきた。



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