2019年1月10日(木)
『女妖』(1960年)
監督:三隅研次
岐阜柳ヶ瀬・ロイヤル劇場
西条八十の原作をもとにした全3話のオムニバス映画。
いずれも船越英二扮する人気作家・尾形十九が主人公というか狂言回しで登場する。
とある昼下がり、尾形十九は浅草観音で着物姿の美女と出会った。
美女を演ずるのは山本富士子。
ふたりはたちまち意気投合し、酒杯をかさねていく。
そんな二人の後を、チンピラ風のアンチャンが、ひそかにつけていた。
愉快な時間が過ぎ、帰りそびれてしまった二人は、やむなく宿をとり、結ばれた。
深夜、二人が投宿した連れ込み宿に、銃で撃たれたやくざの親分が転がり込んできて、絶命してしまう。
警察がきて面倒になるといけないので、尾形は自分の名刺を渡し、美女を先に返した。
ここまで、じつは美人局(つつもたせ)の話だろうとおもって見ていた。
カモが可愛げのある男だったので、つい身体をゆるしてしまった美人局女の話、みたいな展開だ。
ところがなだれ込んできたのが、ゆすり役のチンピラでなく、銃撃されたやくざの親分だ。
妙なことになってきた。
舞台がかわり、美女がつかつかと入って行ったさきには、「大和組」と組名の入った半纏をまとったいかつい男たちがたむろしている。
なんと、山本富士子扮す美女は、やくざ一家のひとり娘で、まもなく跡目を継ぐことになっていた!!!
しかも、あの晩撃たれたのは、敵対する組の親分だった。
はあああ????
半世紀以上も昔に、「セーラー服と機関銃」みたい話を、山本富士子で撮っていたのかと大いに期待したが、世の中、そんなに都合よく進んでいくわけがない。
彼女は地道な生き方を選ぶことを暗示して第一話が終わってしまった。
しかし、山本富士子が鉄火な姉御姿で喧嘩の啖呵をきるシーン、見たかったなあ。
このあと、有名人相手の女詐欺師を野添ひとみが喜々と演じる第2話と、尾形の前に「先生の娘です」と現われた叶順子が愛くるしい第3話と続いた。
いずれもちょっとした(ほんとうに、ちょっとした)ひねりがあって、楽しめた。
色づかいを青で統一した叶順子のファッションと、窓ガラスに映る東京タワーが、パリのエッフェル塔に見えたラストシーンが秀逸。
『女妖』は「じょよう」と読むらしい。
山本富士子が目当てだったが、3編とも面白く、これは拾いもの。
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