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2018年11月19日01:18

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映画日記 『教誨師』 『張込み』

2018年11月18日(日)

『教誨師』(2018年)
監督:佐向大
岐阜柳ヶ瀬・CINEX

名古屋で見逃した大杉漣の遺作。

大杉漣扮する新任の教誨師が、6人の死刑囚と向き合う姿を描く。
10数人の大量殺人を犯した若者は、鋭い問いかけを放ち教誨師という存在を糾弾する。
いっぽうで、文盲のホームレス老人は、教誨師から文字を教えてもらい、やがて洗礼を求めることになった。
しかし、教誨師とは敵対していたような若者が、やがては彼にすがることになる。
これまでなにごとにも控え目で従順だった文盲老人が、文字を得ることによって、生まれて初めて自分の思いのたけを教誨師にぶつけた。
老人の放った問いかけは、教誨師だけでなく、これまでの人生で出会ったすべての人々、そして本作を見ている観客すべてに向けたものだろう。

死刑囚を演じた6人がそれぞれの持ち味を十二分に発揮していた。
古舘寛治や光石研はもちろん、烏丸せつ子の芸達者ぶりにはびっくりだ。。
本作ではじめて知った若者役の玉置玲央と、老人役の五頭岳夫が印象に残る。
もうひとり、終始もの静かな子どもおもいの死刑囚を演じた小川登という人は、監督の旧友でふだんは会社員をしている方だという。
大杉漣が、そんな6人を相手に、受けて立つ。
主演であると同時に、死刑囚のひとり一人を浮き上がらせるための助演者でもあった。

『教誨師』は大杉漣の初プロデュース作だった。
本作を皮切りに、いったい彼はどんな映画を作りたかったのだろうか?


『張込み』(1958年)
監督:野村芳太郎
岐阜柳ヶ瀬・ロイヤル劇場

東京で起きた2人組による強盗殺人事件の片割れが、拳銃を持ったまま逃亡した。
中年と若い刑事のふたり組が、犯人が立ち寄る可能性が高い、かつての恋人が住む佐賀へ向かう。
満員の夜行列車で飛び乗ったふたりは、列車の床に座り長い夜を過ごすことになる。
ようやくたどり着いた佐賀で、ふたりは休む間もなく、今は銀行員の後妻におさまっている女の家へと足を運んだ。
そこには、彼女の家の様子をうかがうのに最適な、小さな旅館が建っていた。
連日35度の暑さが続くとラジオのニュースが流れるなか、刑事たちは旅館の2階部屋に腰を落ち着けた。
さっそく若い刑事が死角となる窓のわきから、女の様子をうかがう。
鋭いその目は、まるで獲物を追う飢えた狼のようだ。
彼は心の中で叫んだ。
「さあ、張込みだ!!」

見るのは2度目。
よく知られたストーリーなのであらすじは省略。

鉄道好きにはたまらない1本だ。
冒頭の東京〜佐賀間の夜行列車のシーンがすばらしい。
ネットで知ったのだが、本物の夜行列車の最後尾に、撮影用に1両を増結したとのこと。
一夜が明け、陽の光の中を列車が鉄橋を渡っていく。
セリフから、木曽川に架かる鉄橋のようだ。
木曽川の鉄橋なら、この日も名古屋から岐阜へ来るさいに、私も渡ってきた。
主な舞台となる佐賀も今年の1月に訪れたばかりだ。
いつものことだが、自分の知ってる土地が映画に登場すると、妙にうれしいものだ。
夜行シーン以外にも映画のあちこちで列車が登場する。
締めくくりも佐賀から東京に行く夜行列車だ。
ちなみに、列車はすべて蒸気機関車だった。

若い刑事を大木実、中年刑事が宮口精二だ。
高峰秀子が幸せうすい逃亡犯の恋人役を演じた。
田村高廣、多々良純、菅井きん、といったベテラン陣が脇を固める。
とりわけ、張込みをする旅館の女将を演じた浦辺粂子が絶品だった。

古い俳優たちもいいが、スクリーンに映る古い景色や光景に見入ってしまう。
佐賀のまちなかでも、道路は未舗装で、車が通るたびに砂ぼこりが舞った。
小田切みき扮する旅館の若い女中が、ラジオから流れる美空ひばりの歌を聴きながら、その歌詞を紙切れに書き写していた。
雑誌の「平凡」や「明星」についてくる付録の歌本を、くり返しながめていた子どものころを懐かしく思い出した。



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