2018年10月7日(日)
『顔たち、ところどころ』(2018年)
監督:アニエス・ヴァルダ JR
伏見・ミリオン座
アニエス・ヴァルダが写真家のJRとともに、フランス各地を巡り、その先々で地元の人たちの巨大なポートレートを制作していくという映画。
マイミクさんたちがほめてたので見に行った。
正直なところ、何が面白いのかと、少々疑心暗鬼だったが、ヴァルダとJRのすれ違いを描くヌーベルヴァーグ風な出だしから、スクリーンに引き込まれしまった。
冒頭の日本で言ったら炭住(=炭鉱住宅)に住み続ける初老の女性のエピソードでグッときてしまった。
その女性のためにヴァルダとJRが、炭住の壁いっぱいに彼女の写真を貼り付けた。
初めて壁に貼られた自らのポートレートを見た女性が、一瞬驚き、つぎに目にいっぱいの涙を浮かべた。
そんな彼女をJRがやさしく抱きしめる。
これこそが芸術だ。芸術の力だ。
失礼だが、そんなにアートに触れることのない人生を送ってきたであろう女性が、なんともいえない感動でうちふるえていた。
これまで彼女自身も知らなかった、自らの顔に皺となってきざまれた苦難の歴史と、それ故の「美」に触れた一瞬だった。
真の芸術とは、きっと民衆に寄りそうものだ。
だとすると、第七芸術といわれる映画も、きっとそうなのだ。
「映画くらいは弱い者の味方であってもいいじゃないか」
鈴木則文監督の言葉をおもいだす。
そして、この日飛び込んできた、1億5000万円もする芸術をゴミにしてしまったという奇妙なニュースが重なった。
ところで、本作ではジャン=リュック・ゴダールがちょっとした敵役になっている。
あの終盤のエピソードは、ほんとうだろうか?
JRがサングラスを外すためのきっかけとなる、ネタのような気がしてならない。
そんなことも含め、とても面白い映画だった。
快作!!
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