mixiユーザー(id:6810959)

2018年09月27日00:19

112 view

本●「鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす」

本●「鉄路2万7千キロ 世界の超長距離列車を乗りつぶす」(新潮文庫)
下川裕治:著

長野への旅行中に読了。

タイトル通り、世界各地を走る超長距離列車5本の完乗記だ。
超長距離と銘打つだけあって、いずれも車中で何泊もすることになる。
中国の広州からチベットのラサへの旅がいちばん短くて2泊3日、いちばん時間がかかった6泊7日はロシアのシベリア鉄道だ。
そのほかに、バンクーバーからトロンとまでカナダを西から東へ横断するカナディアン号が4泊5日、アメリカ北東部のシカゴからメキシコの国境沿いを走り西海岸のロサンゼルスをめざすテキサス・イーグル号が3泊4日だった。
いわゆる寝台列車だが、いずれもオリエント・エクスプレスみたいに、寝台列車の前に「豪華な」という形容詞がつかない。
寝付けない夜をなんども過ごし、駅や車内の食べ物がまずいうえに高いので、わずかな停車時間を使って駅を出て食料の買い出しに走る、そんな日々のくり返しだ。
苛酷な旅だ。

きわめつけがインドだった。
北東部のディブラがルを出発し、インド亜大陸を斜めに下り、最南端のカンニャクマリをめざすヴィベクエキスプレス号の記録が壮絶。

「顔の横に、インド人の足がある。もちろん裸足だ。暗くてわからないが、きっと牛糞を含んだ土や埃で足は黒ずんでいるはずだ・・・・」

冒頭から、この旅の苛酷さが伝わってくる。

経済成長とともにサービスが向上していく、中国やロシアの鉄道旅行事情の変遷を知ることができる。
いっぽうで、自家用車や飛行機やバスでなく、鉄道でしか移動できないアメリカ人がいることに、アメリカが抱える闇を知る。
鉄道旅行を通じて、現在の世界の、光と影がみえてくる1冊でもあった。

読む分には面白いが、シベリア鉄道をのぞき、行くのをためらうような旅ばかりだ。
毎度のことながら、私と同じ1954年生まれの著者の行動力には頭が下がる。



9 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年09月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30