mixiユーザー(id:6810959)

2018年09月19日01:41

279 view

本●「吉行淳之介ベスト・エッセイ」

本●「吉行淳之介ベスト・エッセイ」(ちくま文庫)
吉行淳之介:著 荻原魚雷:編

読了。

マイミクさんが「文体診断ロゴーン」という、書いた文章を評価するサイトを紹介していた。
面白そうだったので、私も自分のmixi日記をいくつか診断してみた。
結果、私の文章は小林多喜二に似てるそうな。
いっぽう、まったく似てないのが、岡倉天心と三木清だった。
小林多喜二と、岡倉天心や三木清では、何が違うのか気になる。
先日、小林多喜二の「蟹工船」と、三木清の「人生論ノート」をパラパラと立ち読みで比べてみた。
一目瞭然、なるほどとおもった。

「蟹工船」は冒頭から「〜街を見ていた」、「〜捨てた」、「〜酒臭かった」と文末の大半が「〜た」で終わっていた。
いっぽう、「人生論ノート」の文末には「〜である」が目立つ。
どうも、「〜た」と「〜る」の違いのようだ。
ということで、文体が似てる似てないの件はすぐに疑問が解けたのだが、「ロゴーン」の診断で腑に落ちないところがもうひとつあった。
それは、私の文章が「硬い」という評価結果だった。
診断にかけた三つ四つの日記すべてが、「硬い」になっていた。
そんなに「硬い」といわれても、実はここ数年・・・・

と、ここで吉行淳之介が登場する。
「吉行淳之介ベスト・エッセイ」を買ったのは先月のことだった。
田中小実昌、結城昌治に黒岩重吾と、“昭和”テイストにあふれる最近のちくま文庫のラインナップには目をみはる。
この本もその流れにある1冊だが、さきの3人と比較すると、さほど興味のない作家だった。
ところが、裏表紙のキャッチフレーズにひかれ、おもわず衝動的に買ってしまった。
そこにはこう書かれていた。

「水のような」文章で綴ったエッセイ集。

硬いか柔らかいかというレベルではない。なにしろ、水だ。
ごてごてとせず、透明で、すらすらと流れるように書かれ、一読すればすうっと身体にしみわたっていくような文章、ということだろう。

せっせと書いてる私の映画日記に、なにか参考になることがあるかもしれない。
最初のうちこそ、どこで句読点を打ってるのか、漢字の配分はどうだろうかと気にしてたが、そのうち読むのに夢中になっていた。
たしかに、すらすらと読める。
ただし、どうしてすらすらと読めたのか、その秘密がさっぱりわからない。

その昔、吉行淳之介の父親・吉行エイスケに「飲み打つ買う」を教わったという、文芸評論家・十返肇(とがえり はじめ)との因縁を綴った「実感的十返肇論」が読ませる。
十返肇と、彼の浮気相手である“銀座の女”との間で、別れ話がこじれてしまった。、
古くから知っている年長の十返肇から、吉行淳之介が別れ話の仲介役をたのまれ、右往左往するという一編だった。
吉行淳之介をもってしても、“銀座の女”との交渉は困難をきわめたようだ。

「・・・・私の人生で、女というものはとてもとても手に負えぬ生きものであることを悟ったのは、このときが最初である・・・・」

と、述懐していた。


以上、書き終えた分を、さっそく「ロゴーン」で診断してみた。
やや、これまでずっと「E=硬い」の評価だった文章の硬さが、「A=適切」となっているではないか。
吉行淳之介効果、かな?



8 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年09月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30