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2018年08月15日22:40

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映画『海を駆ける』/深田晃司

8/15(水)、シネマe-ra浜松で『海を駆ける』を観る。監督は深田晃司(1980- )。
深田晃司の作品は『さようなら』(2015)以降、必ず観ようと思っている。
『淵に立つ』(2016)はカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門で審査員賞を獲得した。

参〜さようなら)http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1950597981&owner_id=3341406
参〜淵に立つ)http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1956881503&owner_id=3341406

今回の『海を駆ける』は、インドネシアのバンダ・アチェで全て撮影された。
バンダ・アチェはインドネシア共和国のスマトラ島の北端にあるアチェ州の州都である。
2004年のスマトラ島沖大地震による大津波では州として17.3万人、都市として5.0万人の死者が出た。
都市人口は25万人だから、20%の人が亡くなるという大惨事となったのである。

太平洋戦争下でインドネシアは日本軍に占領された。
映画にも映されているいるが、バンダ・アチェの海岸にも、日本軍の当時のトーチカが残されていたり、今でも日本の軍歌を歌える老人がいたりする。

その後、2011年には東日本大震災の大津波で日本も大きな被害を受けた。
インドネシアと日本には共通する歴史的体験と、浅からぬ関係がある。
今年2018年、日本とインドネシアは国交樹立60年の記念すべき年になった。
映画はこうした事柄を背景にしている。

日本では全て片付けられてしまったが、バンダ・アチェには、今も陸に乗り上げてそのままの姿で残されている大きな船がある。
掘り起こせない為、その下には今も多くの遺体が眠っていると言われ、船はまるで巨大な墓のようでもある。
前述した通り、バンダ・アチェの20%の人が亡くなったという事は、現在ここに暮らしている人の殆どが、何らかそういう係累を持っているという事になるだろう。
しかし、神が望んだ事だから仕方ない、とバンダ・アチェの人々は話す。日本人と死生観の違いがクローズアップされる。

インドネシアは多民族国家である。ジャワとアチェは言葉も違う。
アチェは政府に対し独立を訴え、内戦が勃発した。これを「自由アチェ運動」と称し、内戦状態は断続的に30年も続いた歴史がある。
津波の大災害は、結果的に、この内戦を終結させるという側面も持つ事となったまである。奇妙な事だ。

ある日、アチェの海辺に1人の全裸の男が打ち上げられる。
救助されるが、記憶喪失の状態で、自分の名も判らず、何処から来たのかも判らない。
NPO法人で災害復興の仕事をしている日本人女性の貴子は、取り敢えず彼の名を「ラウ」とつける。「ラウ」とは「海」の事である。

なりゆきで、貴子はラウをしばらく預かる事になる。
ラウの周囲では、不思議な事が起きていく。
しかし、ラウはいつも感情を表さず、ただ自然に微笑んでいるように見える。
いろんな人物との対応で、彼がインドネシア語も日本語も英語も理解できる事が判ってくる。
表面的な事は次第に判ってくるが、それが何故なのかは判らない。映画は一切説明もしない。

ラウの起こす事は「奇跡」と呼んでいいかもしれない。
しかし彼には他意がない。善意からした事か悪意からした事か、判断がつかない。
熱中症で倒れて意識を失っている少女の前で、彼は空中から水を作り出し、それを少女に飲ませる。
彼の手は、また、人を昏倒させたりもする。
タイトルの「海を駆ける」は、ラストにその意味が分かるが、それはガリラヤ湖でのキリストの奇跡を想わせもする。
ラウは現代に現れた神か?

しかし冷静に考えた時、自然のなす事に善意も悪意もあろうか。
津波は神の悪意か、台風は人間への処罰か。そう考えたいのは人間の方である。人間中心主義である。
海は、人間に豊かな恵みをもたらし、癒しを与えもするが、ある時は禍と脅威をもたらす暴力ともなる。
人を生かすも殺すも、自然に意思はなく、人間はその前で無力である。
ラウはその象徴のようにも見えるが、これも私の狭い見識がこねたものでしかない。

不可解で謎の多い映画だが、答えが1つとは思えない。
ラウとは一体何か?
観客1人々々が様々に考え、何か見つけ出す事が求められている。

ラウの周囲で、国籍も民族も言葉も宗教も違う若者が友情を育む。
海は世界とつながっている。


監督・脚本・編集 深田晃司
撮影 芹澤明子
美術 Dita Gambio
照明 永田英則
音楽 小野川浩幸

出演 ディーン・フジオカ,太賀,阿部純子,アディパティ・ドルケン,セカール・サリ,鶴田真由 他

2018年/日本・フランス・インドネシア
 
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