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2018年03月31日00:53

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映画日記 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』

仕事帰りに見てきた。

2018年3月30日(金)

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2018年)
スティーヴン・スピルバーグ:監督
名駅・ミッドランドスクエアシネマ

ウォーターゲート事件なら、おおよそのことは知っている。
しかし、それに先だって、ニクソン政権下で起きたもうひとつの出来事についてはまったく知らなかった。
その出来事とは「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれるベトナム戦争をめぐる機密文書を新聞記者たちが暴いたというものだった・・・・

週末の仕事疲れがぶっとんだ。
最初から最後まで固唾を飲んで、スクリーンを見続けることになった。
私だけでなく劇場内の誰もがそうだったのではなかろうか。
半世紀近くも昔の出来事が、まるで今の日本とそっくりだ。
それは、権力者と報道の自由のせめぎ合い。

本日が封切りなので、多くは書けないが、これは傑作だ。

本作は報道の自由についての物語と同時に、中年女性版の『ローマの休日』でもあった。
オードリー・ヘップバーン扮するどこにでもいるお転婆娘が一夜を過ごすことによって、酸いも甘いもかみ分ける気高い王女へと成長するのが『ローマの休日』だった。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は、メリル・ストリープ扮する、つい最近まで専業主婦だった中年女性が、男社会や権力に屈しない女性へと成長する物語でもあった。
裁判所の階段を降り立つメリル・ストリープに、多くの女性たちが敬意の目差しを送る静かなシーンにグッとくる。

ところで、ニクソンと同時期に日本の首相を務めていたのは佐藤栄作だった。
彼が退陣表明をするにあたって、中継のテレビに向かって「テレビカメラはどこかね・・・・新聞記者の諸君とは話さないことにしてるんだ・・・・偏向的な新聞は嫌いなんだ。大嫌いなんだ・・・・・(記者は)帰って下さい」と語った。
このときの光景は今でも覚えている。
さらには、佐藤政権下で沖縄返還協定を結ぶにあたってアメリカと密約があったことをすっぱ抜いた記者が、権力によって潰された事件も覚えている。
報道の自由がいつも勝利するとは限らない。
本作を見ながら、ぎりぎりのところで報道の自由が存在していることを、あらためて知った。
そして、「偏向的な新聞は嫌いなんだ」と叫んだ佐藤栄作を大叔父とする御仁が今の首相であることに、なんとなく因果を感じる。

銃社会を勇気を持って告発する高校生たちや、トランプ政権下のこの時期に『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を撮る人たちがいることに、好き嫌いは別としてアメリカという国の健全さを見る思いだ。

今すぐは無理だとしても、昨年来の出来事を描く日本映画が登場してほしい。
校長夫妻や首相夫妻、小賢しい役人などなど、濃いキャラクターがずらりと並んでいる。
山本薩夫あたりが生きてたら、きっと食指を動かしていたはずだ。



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