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2018年02月27日01:08

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本●「日本軍兵士」

本●「日本軍兵士」(吉田裕 中公新書)

読了。

アジア・太平洋戦争での戦没者は310万人。
推測によるとその9割にあたる281万人が1944年以降の短期間に集中していた。
推測というのは日本政府が年次別の戦没者数を公表していないため。
いっぽう米軍の全戦死者10万997名、そのうち1944年7月以降の戦死者は5万3349名であった。
アメリカは月別年別の戦死者数のデータを作成し公開している。
日本とアメリカの戦死者数の扱いの落差に「一事が万事」という言葉が頭に浮かぶ。

日本の戦没者の多くが戦闘よりも病死や餓死であったということは、よく言われていることだ。
マラリア、栄養失調、結核、自死などなど戦闘によらない死の現場を、体験談や資料をもとに丹念に追っていく。
極端な精神主義、古参兵による私的制裁、まんぞくな訓練もせずに出征した補充兵、時代遅れの兵器、戦争末期には牛革でなく鮫皮で作られた軍靴があったという装備の劣化など、どうして大量の病死や餓死が発生したのか、その背景にも目くばせをしていた。

本書の序章では虫歯が、終章には水虫の記述が載っていた。
虫歯や水虫と戦争という取り合わせが奇異であるが、戦場で多くの兵士たちが苦しんでいたことを初めて知った。
衆議院議員だった園田直は「泥濘戦で、ほとんど半年も靴を脱がないときがあったため、言語に絶するほどの悪臭を放つ水虫に感染し、戦後も長い間、悩まされることになった」と回想する。

言語に絶するほどの悪臭を放つ水虫。

このくだりだけで、戦争のリアルが伝わってくる。



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