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2018年02月15日23:05

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映画日記 『ロープ/戦場の生命線』

2018年2月15日(木)

『ロープ/戦場の生命線』(2018年)
フェルナンド・レオン・デ・アラノア:監督
名駅・ミッドランドスクエアシネマ

舞台が1995年のバルカン半島というから、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争のことだろうか。
緊張が続くとある村で、生活のためになくてはならないただひとつの井戸に何者かによって兵士の死体が投げ込まれた。
早く死体を引き上げないと村人たちが水を飲めなくなる。
“国境なき水と衛生管理団”という人道支援組織のメンバーが死体を引き上げようとしたが、ロープが切れてしまう。
しかし、予備のロープがない。
支援メンバーたちの、ロープを求めての長い1日が始まった・・・・

戦場を舞台にしながら、人や動物の死体は出てくるが、映画の最初から最後まで一発の銃声も轟かず、一滴の血も流れなかった。
あきらかに作り手たちの意図したものだ。
しかし、血は流れなくても戦争の残酷さをきちんと描いている。
戦争がなければ無邪気であるはずの子どもにも悪魔が住みついてしまう。
こういう戦場の描き方があったのかと、目からうろこだった。

人道支援メンバーのリーダー役を演じたベニチオ・デル・トロをはじめ、アメリカ人のティム・ロビンソン、フランス人のメラニー・ティエリー、サラエボ生まれのフェジャ・ストゥカン、そしてロシア人のオルガ・キュリレンコと、まさに国境を超えた俳優たちを配したのも意図的だろう。
そしてその意図は見事にはまっていた。
とりわけ地元の通訳に扮したフェジャ・ストゥカンが醸し出すおかしさと哀しさは秀逸。
そして、プロの俳優なのか、たまたまロケ地にいた住民なのか分からないが、牛飼いの婆っちゃまが最高だった。

とにかく登場する人たちそれぞれに、ここが良かった、あそこも良かったとしゃべりたくなる。
おしっこをするオルガ・キュリレンコが天晴れ。

四苦八苦のすえにデル・トロたちはようやくロープを手にすることができるのだが、その先にはとても苦い結末が待っていた・・・・と思わせて、まるでオセロがひっくり返るようなラストを、きちんと映像で見せてくれる。

エンディングに流れるひさびさに聴いた「懐メロ」にグッときた。

傑作!!


追記:本作の“国境なき水と衛生管理団”というのは架空みたい。
ただし国境なき医師団には水・衛生管理の専門家がいるという。


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