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2018年02月02日00:58

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映画日記 『スリー・ビルボード』

数年前に黒澤明監督の映画をすべて見ることができた。
彼が残した30本の中で私がいちばん好きなキャラクターは、『七人の侍』(1954年)で三船敏郎が演じた菊千代でもなければ、『生きる』(1952年)で志村喬が演じた渡辺勘治でもなく、『静かなる決闘』(1949年)で千石規子が演じた峯岸るいだった。
『静かなる決闘』は主人公の三船敏郎扮する元軍医の青年医師が、戦場で感染した梅毒のために、戦後になって恋人と結婚できず悩み苦しむ姿を描いた作品だ。
峰岸るいは自殺がもとで病院に居着いた自堕落な踊り子だった。
彼女は自堕落で不幸な境遇をすべて世の中のせいにしていた。
主人公の苦悩する医師を陰で「いい気味だ」とせせら笑う嫌な女だ。
こういうひねくれた人物は映画やドラマや小説にはよく登場する。
いわばヒーローやヒロインを際立たせるための点描みたいな人物像だ。
ところが、『静かなる決闘』の峰岸るいは、青年医師とぶつかり合うことによって、おのれ自身でいろいろ考えながら、しだいに成長し、やがて看護婦への道にすすむことになる。


2018年2月1日(木)

『スリー・ビルボード』(2018年)
マーティン・マクドナー:監督
名駅・ミッドランドスクエアシネマ

アメリカのミズーリ州にあるエビングという田舎町のさびれた道路沿いに、今ははげ落ちでしまった3枚の大きな屋外広告看板が並んで立っていた。
ある日、看板の前を車で通り過ぎた中年女のミルドレッドに、ある考えが閃いた。
7ヶ月前、ミルドレッドの娘が何者かによってレイプされたうえ殺されてしまった。
しかし、犯人はいまだに捕まっていなかった。
いっこうに進まない警察の捜査に怒り心頭のミルドレッドが、責任者である警察署長のウィロビーを非難する3枚の広告看板に掲示した。
その看板は静かな町に一石を投ずることになり、その波紋はやがて思いもかけない事態を招くことになるのだが・・・・

見る前はなんとなく『ツイン・ピークス』のような、いつまでも続く悪夢みたいな映画かと思ったら、まったく違った。
あるいは、ドンデン返しが連続する謎解きミステリーかとも思ったが、それも外れだ。
とにかく予測できない展開になっていく。

私なりの結論としては、『スリー・ビルボード』は怒りと憎しみ、そしてその怒りと憎しみを乗り越えていく和解の物語だった。
そして、和解の物語を通じて、ひとりの、否、ふたりの人間が成長する。
怒りと憎しみを乗り越えていくために必要なこと、それは努力、そして言葉と知識。
現在の不寛容な時代へ真摯に向き合った1本。

ヒロインのミルドレッドに扮したフランシス・マクドーマンドを筆頭に、演技陣がすばらしい。
とりわけ・・・・おっと、これは書けないな。

大傑作。

ということで、本年度新作映画暫定1位だった『68キル』は、あっけなく陥落だ。


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