10/3(月)、NHK-BSの「プレミアムステージ」で、二兎社の『書く女』が放送された。
公演は、今年1/21〜31の間、世田谷パブリックシアターで、その後、2/21迄全国ツアーも行われた。
私は、そのうち2/2、穂の国とよはし芸術劇場PLATで開催された回を観にいこうと思っていたが、結局都合がつかず果たせなかった。
今回の放送が何処で収録したものかデータを持ち合わせていない(恐らく世田谷パブリックシアターだろう)が、私としてはそんな訳もあって、大変嬉しいものだった。
まずデータ、
作・演出 永井愛
美術 大田創
照明 中川隆一
衣装 竹原典子
作曲・ピアノ演奏 林正樹
出演
樋口夏子(一葉) 黒木華
樋口たき(一葉の母) 木野花
樋口くに(一葉の妹) 朝倉あき
半井桃水(一葉の小説の師) 平岳大
半井幸子(桃水の妹) 早瀬英里奈
伊藤夏子(一葉の友人) 清水葉月
野々村菊子(同) 森岡光
田辺龍子(花圃/一葉のライバルの小説家) 長尾純子
平田禿木(雑誌「文学界」の使い/英文学者,随筆家) 橋本淳
馬場孤蝶(英文学者,評論家) 山崎彬
川上眉山(小説家) 金崎健太郎
斎藤緑雨(小説家,評論家) 古川耕史
初演は2006年で、その時は寺島しのぶが主演した。高い評価を得て、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞最優秀女優賞等を受賞した。
今回は10年振りの再演となる。
出演者は全員代わった。
スタッフは一緒だが、大きな違いは、効果音を林正樹による生のピアノ演奏が担ったという点である。
林正樹は舞台中央やや左手奥に、舞台の最初から最後迄いて、影にはなっているが、そこで演奏しているのは観客から見える。
初演を観ていないので比較はできないが、演奏の効果は大きかった。舞台の情景や登場人物の心情を、しっとりと、時に滑稽に、時に劇的に、時に前衛的に奏でる。
樋口一葉(1872-96)は明治時代、初めての職業作家として名をなし、後世に残る名作を書いた。
『書く女』は彼女の半生を描くのだが、彼女は弱冠24歳で肺結核の為死んでしまう。
小説を書こうと決意したのが1889(明治22)年17歳の年、1891(明治24)年に東京朝日新聞専属の記者・作家である半井桃介に師事、処女小説『闇桜』を翌1892年に発表。それ以降4年間で20作以上の小説を書いた。
最初の『闇桜』はひどいものだった。
代表作は全て最後の1年2ヶ月の間に書き上げた。
舞台の上でも、一葉は書きに書いている。原稿用紙の中に収まらず、宙空迄筆は走る。
妹や母親に、「もう秋よ」「もう冬よ」と、季節を言われてやっと気付く程の集中振りである。
明治という、近代国家としては迷走を続ける時代、個人主義の人間観も未熟な中で、女性は妻であり母である事だけを要求された。小説家どころか、女性が職業を持つという事さえ考えられなかった。
そんな時代に一葉は、恋をし、自店の仕入れのために歩き回り、何を書くべきか、どう生きるべきか足掻き続ける。
維新政府は富国強兵策をとり、近隣国に触手を伸ばすようになる(日清戦争)。矛盾を感じる一葉。しかし国民の多くは、熱に浮かされたように、万歳を繰り返す。
一葉を描くという事は、明治という時代を描く事でなければならない。
母親は夫と息子を失い、長女である一葉を戸主とした。
家計は借金に次ぐ借金、塾の手伝い、荒物屋等も試みるが、生活は困窮の度を深め、次第に悪い場所への引っ越しを余儀なくされる。
一葉の小説には、場末の人達とその生活が描かれるようになる。しかし、彼女は彼等を人間として平等に、差別せずに見つめた。
士族出の母親は、仕事を生活の為としか考えず、一葉が何度も書き直しをする訳を理解せず、プレッシャーを与え続けた。
女性芸術家として、時代のパイオニアだった一葉の許には、多くの人が集った。
評論家達とは性別を分けず、論戦した。新しい女性、新しい男女の関係、新しい小説、それらを一葉は考え続けた。だが、言文一致が地に着く前に死んでしまう事になる。
高熱を発した一葉の夢の中に、登場人物達と実生活で付き合った人、家族、友人等が幻のように現れては消えていく。
同じ一葉と周囲の人達を描いた作品に井上ひさし原作の『頭痛肩こり樋口一葉』がある。
参)
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