「おめでとうございまーす。あなたは大きな罪を犯して死にましたが、もう一度人生をやり直すチャンスを与えられました!」
死んだ男の魂である<ぼく>は、自殺したばかりの男子中学生・小林真の体に入り込み、自分の前世の記憶も、その少年の知識もないままに、現世における修行を始める。決められた時までに、前世で自分が犯した罪を思い出さなければならないのだ。
「オトナ帝国の逆襲」や「戦国大合戦」の原恵一監督による最新作アニメ。原監督らしく真っ直ぐで前向きな映画。
ではあるが、前半はややハード。男子中学生がいじめられっ子であったところの描写は、そう甘いものではないが、まだマシ。彼には美術の趣味という逃げ込む場所があったので心が折れてしまうことはなかったのだ。問題は別にあって、彼の自殺の直接の原因は、憧れの同級生が中年男性と援交していたことと、母親の不倫現場を目撃したことだったのだ。この心理的NTRコンボ攻撃は結構きつい。耐性のない人には鑑賞をお勧めできない。
とはいえ、少年の自殺前まではバラバラであったであろう家族が、鍋を囲んで食事しながら会話をよみがえらせるクライマックスは、涙なしには観られない。原作は読んでいないが、映画だけを観ても十分感動的な良作と分かる。
ただまぁ、原監督ってもうどんどんエンターテイメントから離れていこうとしているんだなぁと感じる。「クレしん」は傑作だった。「河童のクゥ」は子供向けファンタジーでありながら地味で辛口だった。今作は設定こそ死後の世界に触れているが、ほとんど地に足の着いた人間のドラマだ。原監督の好きな、古き良き時代の邦画に近い世界観をこれからも作り続けていくのだろう。個人的には少し不思議ワールドに確かな人間描写を持ち込んだエンタメこそが、彼の力量が最大限に発揮できるものと思うのだが。
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