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2026年10月10日11:00

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オペラコンクール公開講座~4「協奏するラグジュアリー:衣裳と一張羅」��

公開講座「協奏するラグジュアリー:衣裳と一張羅」

・2026.10.3(土)/ 静岡文化芸術大学 南176大講義室
・講師 静岡文化芸術大学 デザイン学科 教授 藤井尚子

前提
「衣装」:身にまとう衣服全般。
「衣裳」:出発は上下に分かれた衣服、特に舞台,伝統芸能,格式のある儀礼で用いる装いのニュアンス。

オペラ観劇に何を着ていくかは、楽しい悩みの一つである。格式ある劇場に相応しい装いとは何かという問いは、欧米のオンラインフォーラムでも常に活発な議論を呼ぶテーマとなっている。
こうした悩みが生まれる背景には、衣服をめぐる表象の多様性(個人の嗜好とある集団への帰属、他者との差別化と同化など)があり、社会的存在である人間は、衣服の着用を通じて、意識的あるいは無意識的にコミュニケーションを図っているからである。
オペラ観劇は、西欧圏の文化や歴史の文脈に参入することでもあるため、装いに悩むのは当然と言える。しかし、この文脈やルールは西欧圏において不変の前提として存在してきた訳ではない。彼ら自身もまた、時代や環境の変化に応じて装いの規範を再構築し、オペラの文脈に参入してきたのである。
本講演では、「観客席」という劇場空間と衣裳との関わりから、現代の私たちがオペラに向き合うための「一張羅」について紐解いていく。

0. 一張羅

1)その人の持っている衣服のなかで、最も良いもの。
2)ほかには持たず、たった一着きりの衣服。
…個人が持つ衣服の中で、という基準で、多くの人々の衣服間の比較ではない点要注意!

1. 劇場空間をめぐる「非対称性」

(1)プロセニアム・アーチ
中世以来、「悪魔や怪物の大口(Hellmouth)」を原型としたプロセニアムは、舞台と客席を隔てる「額縁」として機能する。

 三角(右)異界の彼岸としての舞台/日常の此岸としての客席
  …安全な此岸から彼岸を見てカタルシスを得る。

《ヴェベーレ・ゲロサの舞台美術》(17C後半)/版画
フォト


(2)ロージュ(栈敷席)
劇場のボックス席で、セミプライベートな高級観覧席。
フランスではロージュ(loge)、イタリアではパルコ(palco)、日本では栈敷席。
所有者の私有地であり売買や相続が可能。自由な模様替えも行えた。

 三角(右)ブルジョワジーの社交場
 三角(右)見る者/見られる者 による視線の交差

《パリ・イタリアンオペラハウスの情景》(1851)/版画
フォト


(3)オペラグラス
1825年、パリ、ピエール・ルミエールが左右同時に調整可能な中央焦点ホイールを発明したことにより改良された。
19世紀中頃になると、オペラグラスはファッショナブルな劇場観客にとって欠かせないアクセサリーとなり、需要に応えるべく、メーカーは精巧かつ美しく装飾されたモデルを多数製造した。

 三角(右)覗き見のテクノロジー

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
《黄金の仮面の栈敷席》(1893)リトグラフ
フォト


(4)アルス・オプ(Als Ob)「かのようにの哲学」
ドイツの哲学者ハンス・ファイヒンガーは1911年に発表した著書『かのような哲学』において、人間は世界の根底にある現実を本当に知ることは決してできず、その結果人々は思考システムを構築し、それが現実と一致すると仮定すると主張した。人々は世界が自分たちのモデルと一致する「かのように」振る舞い、そうした仮定に基づいて行われた
観察を使用して、新しくより良い構成概念を作り出すと考えた。

 三角(右)あたかも貴族階級である「かのように」振る舞うこと。
 …劇場の主たる顧客となったブルジョワジー:市民階級の富裕層であって、貴族とは違う。
 三角(右)偽物の再生産から、新たな社会的秩序を実質化する移行のプロセス。
    ↑
 「一張羅」に漂う、揶揄の正体か?

(続く)
 
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