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2026年04月09日19:10

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映画 『両親(ふたり)が決めたこと』

4/8、シネマイーラ浜松で『両親(ふたり)が決めたこと』を観る。

フォト

安楽死をテーマにした文学作品や映画は多くあるが、本作はデュオ安楽死を扱っている。「デュオ安楽死」とは夫婦が同時に安楽死を遂げるもので、私はこういう手法が存在する事を初めて知った。

スペイン・バルセロナ、80歳代のクラウディアはがんに罹患して長い。最近は脳への転移が確認され、半身麻痺で片目が見えなくなったり、錯乱症状を呈する事もある。
医者からはもう打つ手はないと宣告され、家にいて夫フラビオの世話になっている。
末娘のヴィオレッタは父と伴に最期の日々を看取るべく、家に同居する事とした。
が、錯乱状態になると家の中を動き回り、夫らの手に負えない事もある。

本作は、だが、暗い悲劇仕立てでなく、ところどころにダンスや歌をはめ込み、ユーモアも交えて進行するところが独特だ。

クラウディアは元ミュージカル女優で、夫は大輪の花たる妻を支え舞台監督を務めてきた。
映画では、彼女の動きに7〜8人のダンサーがジョイントし、コンテンポラリー風の抽象的な踊りを見せたりもする。
ひょっとすると、これはクラウディオの脳内に起こっている妄想か、過去の華々しい記憶の一端なのかもしれない。

クラウディアが安楽死を選択するに至り、夫フラビオも一緒に死ぬ事を決心する。この世に1人残された生活など、フラビオには堪えられない事だった。
クラウディオは夫に生きるよう諭すが、最後には理解してくれた。

ただ、安楽死の法はスペインでも制定されているが、健康な夫や妻が一緒に安楽死を選ぶデュオ安楽死は認められていない。
そこで、フラビオはそれが可能なスイス(*)に行く事とした。

(*)スイスの憲法裁判所は�犢睥霽徂悗里匹舛蕕�が終末期に安楽死するとき、そのパートナーは健康であっても共に安楽死することができる"と認めている。

フラビオは末娘にこの決心を話す。彼女は、母の安楽死はともかく、父の同時の死迄了解するのは困難だった、が、父の思いは理解してくれた。ましてや、外に出ていて、家に寄りつかない長女や兄の理解を得るのは一層困難だろうと思われた。
ヴィオレッタは、両親の結婚記念パーティを企画し、姉兄とその家族を家に集める事とした。
久しぶりに顔を合わせ、楽しかるべきその場で、ヴィオレッタは両親の安楽死の決心を皆に告げる。
しかし、姉兄の理解は得られぬまま、2人と家族は戸惑いながら帰ってしまう。

クラウディオとフラビオはスイスに向けて旅立った。末娘もスイス迄は同行したが、最期を看取る事はせず、2人と別れた。
フラビオは事前に幾度かこの施設に来て準備を進めてきた。
施設の人々は事務的と思える程冷静に2人に対応し、滞在する場所、最期を迎えるために選択する環境等々について説明する。その中には棺や音楽もある。
クラウディアは棺の中に収まる自身の姿を想像する。そこにいる自分は若く美しい。

最後の日がやってくる。

映画は、その後の進展も冷静に映し出している。棺が焼却炉に納められ、火が点けられる。その後、職員が骨と灰を掻き出し、容器に入れる。そして、ロッカーのような扉の中に容器が入れられ鍵がかかると、エンドクレジットが上がってくる。

安楽死がタブー視されてきた時代は終わりを告げつつある。


監督・脚本 カルロス・マルケス=マルセット
共同脚本 クララ・ロケ,コーラル・クルス
撮影 ガブリエル・サンドル
美術 ライア・アテカ
衣装 パウ・アウリ
編集 キアラ・ダイネーゼ

出演 アンヘラ・モリーナ,アルフレド・カストロ,モニカ・アルミラル・バテット他

受賞 トロント国際映画祭作品賞

2024年/スペイン・イタリア・スイス

監督カルロス・マルケス=マルセットは、準備段階でスイスの安楽死支援団体「Exit」「Dignitas」に綿密な取材を行った。
夫婦が最期を迎えるシーンは本物の施設とベッドを使用して撮影された。施設のスタッフ役の一部は、実際にその施設で働くスタッフ達だとの事。

デュオ安楽死の実績は、欧州において2022年に29件58人とまだ多くはない。
安楽死を世界で初めて法制化したのは2001年のオランダ。同国では全死亡数の5%にあたる9068人が安楽死で、デュオ安楽死は33件66人である。(何年のデータか不詳。)
2022年にはジャン=リュック・コダールがスイスで安楽死を遂げた。
2024年、オランダのドリス・ファン・アフト元首相と妻のユージェニーが93歳で「デュオ安楽死」を実行した事は、ヨーロッパ各国のメディアで大きく採り上げられた。

日本では安楽死そのものの法制化がされていない。
 
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