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2026年03月30日12:00

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『HIMARI という名の才能~14歳のヴァイオリニストの現在地』~3/end

(続き)

2025年11月、HIMARIはフィラデルフィアに戻り、カーティス音楽院でカヴァフィアンのレッスン。
1ヶ月後の年末に名門スイス・ロマンド管弦楽団と演奏するブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番の練習。
カヴァフィアンは言う、「今は狭い部屋にいてピアノ伴奏だが、オーケストラと弾く時の事を想像しよう。広い空間にいるイメージ、ホールの最後列へオーケストラの音を越えて響かせるイメージで。その感覚に慣れていこう。」

HIMARI、協奏曲の冒頭の序奏から演奏を開始。
カヴァフィアン「内に籠るのでなく、何かが今始まるという感じ、そこから展開する余地を残して。」
「ここは、最後の方で急ぎ過ぎないように、もっとしっかり歌いきる、そうしないとオーボエの入りが遅れてしまう。」
カヴァフィアンは、出入りするオーケストラの様々な楽器をイメージして弾かせようとしている。

このあと、HIMARIは鑑賞の授業で美術館に行く事になっているのだが、キャンセルして練習を続けたいと言いだす。
しかし、カヴァフィアンは、「美術館には行った方がいい。ヴァイオリン、ヴァイオリンという生活ではダメ」と。
そしてカメラに向かい「彼女の将来は人間として、音楽家として、どう成長できるかにかかっている。だから、今は少し怖く、心配だ」とも言う。

ブルッフ第1番の第2楽章の練習。この曲で最も長く、旋律美を奏でるソリストの見せ場。
カヴァフィアン、「ひとつ伝えたい、もっと間違えていい、もっと挑戦して! うまくいかなくても大丈夫。守りに入らないで、思い切って飛び込んで。」
そして、「弾けてしまうから、完璧に固執してしまう。完璧にできるからこそチャレンジして欲しい。(完璧に弾くだけでは)表現を狭める事になりかねない。」

レッスンのあと、HIMARI、「小学4年で受験してここに来る事ができて、結果、私の人生は大きく変わった。カヴァフィアン先生に習い始めて4年目になるので、先生に止められた時、何を言われるのか分かってきた。怖い時は怖い、いつだったか2週間スケールの練習だけやり続けた事もあった。」

2025年12月、ジュネーヴ・ヴィクトリアホール。スイス・ロマンド管弦楽団の年内最後の定期公演。
HIMARIとしてもデビューイヤーの最後を締め括るコンサートになる。
スイス・ロマンドはラヴェルやストラヴィンスキーなど新しい音楽をいち早く演奏してきた歴史がある。名門オーケストラの音と自分の音をどのように重ね合わせるのか、ホールでのリハーサルが始まる。

指揮は同楽団の音楽監督を12年務めてきたジョナサン・ノット。
リハーサルでは、HIMARIの歌をたっぷり聴かせるため、オーケストラにしばしば弱音を要求していた。
オーケストラ全員にノットは言った、「何度も指示して申し訳ない。ただ、皆で彼女と一緒に音楽を作っていきたい。ここにまだ若い演奏家がいる。皆さんには彼女の手を優しく取って、これからの人生が美しいものであると伝えて欲しい。」

リハーサル後のノット、「音楽を特別なものにするのは、神から与えられた "声" だと思う。(周囲の者が)守ろう、コントロールしようとすると、その "声" を失わせてしまうかもしれない。彼女に心から自由に歌わせてあげないといけない。」
ここでノットは " Free as a Bird " という慣用句を使った。
更に「HIMARIは偉大なる芸術家になれる大きな可能性を秘めている。楽器を完璧に習得しても自分の "声" を持っていない人はいる。HIMARIは天からその "声" を授かった存在だ。」
前掲したカヴァフィアンの発言と一致する部分がある。

本番を終えて、ノットは熱っぽく話した、
「ブルッフの第2楽章は詩と愛に満ちている。彼女がオーケストラの奏者と合わせる時に微笑んだのを見て、最高だと思った。ちょっとしたチェスの対局をしているかのようだ。演奏家同士で音楽を分かち合う喜び、それはある種の愛だ。私は、愛を求め、愛を与えたい。人生とは愛なのだから。私が興味があるのは、まだ若い彼女が音楽の中にどんな愛の形を見ているのか。言葉はあまりに明確過ぎて、時に本質を語りきれない。しかし、彼女は音楽という言葉で自分なりの愛の形を見せてくれた。」

フォト


最後にカヴァフィアンの言葉で番組は閉じた、
「演奏を聴いていると、彼女が如何に音楽を愛しているかが伝わってくる。それは素晴らしい資質だ。上手に弾く音楽家的な若者は他にもいるが、彼らにとって音楽は命がけではない。HIMARIの場合、音楽への愛そのものが音として聴こえてくる。」


 ディレクター 牟田高太郎,中嶋梓
 放送 3.21(土)、NHK-BS
 
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