mixiユーザー(id:3341406)

2026年03月21日14:00

74 view

「NHKアカデミア」中村獅童(後編~1)

(前編から続き)

中村獅童の歌舞伎におけるスタートは散々なものだった。

獅童「ありとあらゆるオーディション等を受けたが、ことごとくダメだった。歌舞伎で群衆の役しかやっていない者に来るオファーは1つもない。その時、僕がもっとおりこうさんだったら、辞めていたかもしれない。
"時にはバカになれ"というのは"夢を見続ける"という事。あいつバカだねって言われながらも、実現する迄夢を見続ける。
"いつか僕は歌舞伎で主役をやる"とあの時口に出してたら、"無理だから辞めなさい"とか"バカな事言ってるよ"って指をさされたかと思う。
それでも諦めないでやってきた、"自分一代で中村獅童という名前を大きくしたい" そういう思いでやってきた、のだが…」

獅童の名を世に知らしめたのは映画『ピンポン』(2002/曽利文彦)だった。
スキンヘッドで敵方の主将ドラゴン役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
「それ迄溜め込んでいた思いが『ピンポン』のドラゴン役を通して爆発した瞬間だった。
卓球はやった事がない。オーバーでもいいから迫力を出して、と監督に言われた時閃いた、歌舞伎の型っぽくしてみたらどうか。やってみたら監督がすごく喜んだ。多くの方にも認めてもらい、ひと晩にしてこんなに景色が変わるものかと思った。それを境に今迄一つもなかったオファーが次々来るようになった。」

『ピンポン』を機に歌舞伎でも主要な役を任されるようになった。
歌舞伎『戯場八景名残隼』で中村七之助と、『釣女』で八代目中村芝翫と共演。
だが、それは新たな苦難の到来を意味していた。

「歌舞伎では群衆しかやっていない。一気に知名度が上がり、その加速に歌舞伎の技術を追いかけてついていくのが大変。
親がいない分、いろんな方に教えてもらった。
歌舞伎は実際に教わりに行く、これが大事。今の時代だから映像で研究もするが、先輩達がやった工夫、役作り、そういうものは映像だけでは分からない。
歌舞伎には"口伝"という手がある。口で直接、振りやセリフのタイミング、テンポ、イントネーションなどを憶えていく訳だが、数々の先輩が、何もできない手も足もでない中村獅童を懇切丁寧に教えてくれた。それを如何にして自分のものにしていくか。」

「その時、勘三郎兄さん(十八代目中村勘三郎)に言われた事で未だに心に残っている言葉がある。
"映画であれだけの芝居を心から演じる事ができたんだから、型がある世界だって必ずできるようになる。型をやろうやろうとして気持ちが入らなくなっちゃうんだったら、型なんか今はどうでもいい。心でがむしゃらに演じられる役者になれ" そう言われた。
本当は、自分の魂と役の持っている型、これが一致した時に初めて完成するもの。どっちが先行してもいけない、型だけでも観客の心には届かない、また、情熱だけでは型ができてないと評価は下がる、そこが歌舞伎の難しいところ。
でも、先ずは心で演じられるよう、がむしゃらに!と、勘三郎兄さんの言葉を大事にしてやってきた。」

中村勘三郎は『ピンポン』の10年後、2012.12.5に病死。

親がいなくても生きていくという覚悟、前進していく大きな夢を持つ楽しさ、実現するかどうか分からない苦しみ。
どんな事があっても乗りきってみせるという強い自分もいれば、ダメかもしれないという弱気な自分も。その行ったり来たりの繰り返し。
一つの山に到達した時、もっと高い山、更に高い山を目指す。その山に登らないと見えない風景というのがやっぱりある。もしかすると、人生っていうのもそういう事なのかもしれない。」

「中国映画(『レッドクリフ』2008-09/ジョン・ウー)に出演したが、セリフは全く分からない中国語。丸憶えして言えればそれでいいという事では無論ない、役の気持ちを入れなきゃいけない。どうしたか?、歌舞伎では先輩のセリフを録音させてもらいそれを何度も聴いて自分のものにするというやり方もある。この時は、これから本番という寸前迄先生にその中国語を言ってもらい、音楽のように、歌を唄うのと同じように、自然にそれが出てくるくらい迄音として習得するというやり方をした。」

「その前『硫黄島からの手紙』(2006/クリント・イーストウッド)にも出演させてもらった。
山道を突き進んでいくシーン。カメラが狙っている所迄向こうから歩いてきて、カメラの脇を通過していく。普通、カメラのどちら側へ抜けていくと指示があるものなので、イーストウッドに訊いたら、彼は、伊藤(獅童の役名)だったらどっちに歩いていく?と。どっちに歩いていくか訊いているのは中村獅童だが、本来、それは伊藤が決める事。伊藤になり切ってやって下さいというメッセージだと僕は受け取った。」

「イーストウッドはテストと本番がよく分からない。声もとても小さい。テストだと思い込んでやっていたら、小さな声でOKと。えっ今のはテストじゃなかったの? 彼はテストからカメラを回している事がある。それは役者に対する信頼の現れでもあって、その信頼に応えられるだけのものをちゃんと用意しておかないといけない。一発に賭けるやり方は、ある種、舞台的だ。」

(後編-2へ続く)
 
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年03月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031