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2022年06月04日14:00

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歌劇《オーランド―》/ウィーン国立歌劇場��

5/15、NHK-BS「プレミアムシアター」で放送された歌劇《オーランドー》。
2019年、ウィーン国立歌劇場の創立150周年を記念して世界初演された。

実はウィーン国立歌劇場は創立来女性作曲家の作品を一度も上演した事がなかったのだが、今回はオーストリアの女性作曲家オルガ・ノイヴィルト(1968- )に委嘱してできた。

時代も性別も軽々と飛び越え、自分の心に正直に長い長い人生を旅するオーランド―。
イギリスの女性作家ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)が残した幻想的な小説『オーランド―』(1928)をオペラ化するに当たって、ノイヴィルトは、台本・演出・衣装等、世界の第一線で活躍する女性アーティストを集めた。

主なスタッフは以下の通り。少なくとも女性が5人/団体入っている。
作曲 オルガ・ノイヴィルト
台本 カトリーヌ・フィユー,オルガ・ノイヴィルト
演出 ポリー・グレイアム
美術 ロイ・シュバーン
衣装 コム デ ギャルソン
ヘアメイク ジュリアン・ディス
メイク コム デ ギャルソン,スティーヴン・ジョーンズ
映像 ウィル・デューク
照明 ウルリッヒ・シュナイダー
振付 ジェニー・オウグルヴィー
ドラマトゥルグ ヘルガ・ウッツ

衣装は川久保玲率いるコム デ ギャルソン。以前から『オーランド―』の破天荒な物語に興味を抱いていたという彼女がこのオペラに向けて作った独創的な衣装は142着。
服飾史とジェンダーを超越する作品は、以下の各シーン写真を参照。

大戦間のイギリスで、心理の襞に分け入るモダニズム作家として活躍するも、精神を病み、非業の最後を遂げたヴァージニア・ウルフ。
小説『オーランド―』は300年に亘り流転の人生を歩む数奇な青年貴族を題材にした虚構の伝記小説。
両性愛者であったウルフが主人公のモデルにしたのは、当時の恋人で貴族の末裔女性ヴィタ・サックヴィル・ウェスト(1892-1962)。
世紀を超え、性別を超え生き続けるオーランド―、オペラは原作の「その後」も描きだしている。

◆歌劇《オーランド―》〜19景からなる音楽による虚構の伝記(2幕/英語)

指揮 マティアス・ピンチャー
演奏 ウィーン国立歌劇場管弦楽団/合唱団
ドラムス ルーカス・ニグリ
エレキギター エドムンド・ケールドルファー

収録 2019年12/18,20/ウィーン国立歌劇場

出演
 語り手 アンナ・クレメンティ
 オーランド― ケイト・リンジー(Ms)
 オーランド―の守護天使 エリック・ジュレナス(カウンターT)
 オーランド―の子供 ジャスティン・ヴィヴィアン・ボンド
 エリザベス1世/純潔の化身 コンスタンス・ハウマン(S)
 サーシャ/貞節の化身 アグネタ・アイヒェンホルツ(S)
 謙譲の化身 マーガレット・プランマ―
 シェルマーディーン/グリーン レイ・メルローズ(Br)

・・・第1幕・・・

オーケストラはピアニッシモからクラスター音をゆっくりゆっくり重ね、暴力的な不協和の最強音に至って突然休止。
それを受けるのは、舞台奥でサンドバッグを太い棒で叩く音。電子処理されて低く腹に響く。
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最初に声を発するのは女性の語り手。彼女はウルフの分身だろうか、長い長い詩を朗誦する。
彼女は全編出ずっぱりだ。
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始まりは1598年、オーランド―16歳。
サンドバックを叩いていたのは半ズボンのオーランドー(ズボン役のケイト・リンジー)で、彼は暗い舞台の前方真ん中に出てきて座り込み、低い声で歌い始める、
「僕は、ここで、独りだ。」
それは歌というよりも呪詛のようで、音程間のグリッサンドが多く、半音の間の落ち着かない音が観客の耳に残る。
コロラトゥーラはとうに役割を終えたと思っていたが、現代にこのような形で存在し得るとは。

孤独なオーランドーは、何よりも詩作に夢中。
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彼の後ろには全身に黒い衣をまとった気持ちの悪い怪僧のような姿が現れる。
それはオーランドーの守護神で、彼の内心をカウンターテナーの超高音で歌う。
いつでもオーランドーのあとについて回る。

エリザベス1世(1533-1603)この時65歳、美しいオーランド―を寵愛し、貴族にとりたてる。
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女王の死後、オーランド―はロシアの皇女サーシャと恋に落ちる。
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サーシャは英国に大寒波と洪水をもたらし、膨大な死者を発生させて故国へ帰っていった。
オーランド―は宮廷から追放の憂き目に遭い、極度の苦痛から1週間死んだように眠り続けた。
3人の医者が呼ばれるが、空疎な主張を繰り返すばかりで手の施しようがない。

ようやく目覚めると、オーランド―は詩人宣言をし、未完成だった詩集の作成を再開、詩の師ニコラス・グリーンを呼ぶが、仮面を被った彼はアル中で、文学の時代は終わった、人生は無価値だと、オーランド―の詩に興味を示さない。

挫折したオーランド―は、チャールズ2世の指名でコンスタンチノープルへトルコ大使として赴任する。
同地で反乱が勃発、激しい戦争状態に陥る。
オーランド―は再び人事不省となり、また1週間眠り続ける。
3つの精神の化身(純潔,貞節,謙譲)が現れ、それぞれ勝手な事を言ってオーランド―を起こそうと試みるが叶わず、3人は立ち去っていく。

目覚めると驚いた事に、オーランド―の身体は女性のそれになっていた。
オーランド―は女性としての倣いに戸惑いながら故国に帰ってくる。

英国は18世紀。
社交界で女性に認められているのは、紅茶にいくつ砂糖を入れるか男性にお尋ねしその通りにする事くらい。詩にも芸術にも縁はない。
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男達の新奇な視線を浴びるが、それに抗う女性としてのオーランド―。
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語り
「男が尊厳をかけて戦う理由は、正義のためではなく、相手を牛耳るため。正義欲というより支配欲。」

時代は19世紀末へと進む。

語り
「男性が記す史書では女性史は無視か誤解されていて、彼女は歴史の概念を修正せねばと思った。(中略)
ヴィクトリア朝時代には児童への性的暴行が急速に増え、家族の規範と見なされた家父長制は、現在でもしばしば理想の形態とされる。近親姦の被害者による告発は多大なリスクを伴い、被害を生き延びた彼等は虐待を止められなかった無力感を覚えている。」

子供達のコーラス
「存在してはいけなかった私達。」

オーランド―は言う、
「私は捨て子と危機に晒される子供達について書こう。」
夜をつんざくような子供の悲鳴。

語り手は台上から客席の方に人指し指を突き出して言う、
「あなたはどちら側?」

・・・・・・・・・

原作『オーランド―』は初版の出版日である1928年10/11の日付で物語を終えている。
しかし、このオペラでは、上演当日である2019年12/18迄生き続ける「その後のオーランド―」を描いていく。


(続く)
 
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