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2026年01月11日11:00

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アントニオ・ガデス舞踊団《カルメン》��/end

・第5幕「セビリアの闘牛場の前」

多くの男女が踊る賑やかな雑踏の中に、カルメンとホセの姿も見える。カルメンは何故か浮かない表情。
闘牛士が酒場の亭主に連れられて現れると、皆喝采。
闘牛士はカルメンを見つけ、近寄って彼女を引っ張り踊る。急に顔が緩むカルメン。
ホセはカルメンを無理やり引き戻す。
音楽がやみ、冷たい空気が漲る。
挑むようなカルメンの目つきは、いかにも「私は自由よ」とでも言うかのよう。
闘牛士はそのそばでわざとらしくカッコをつけ、緑色の正装をこれ見よがしにソロを踊る。
危険を感じた酒場の亭主は闘牛士を戒め、そして「歌おう!」と。
彼の取り巻き達が集まり歌いだす、「セビリア万歳」。
カルメンは微笑み、闘牛士のグループに近寄ろうとするが、それを引き留めるホセ。
カルメンの顔に浮かぶ怒り。

もう一方のグループも、ホセとカルメンを囲んで歌う。
「愛は恐ろしく、嫉妬は不実だ。不実な嫉妬は全てを台なしにする。」
そして、ことさら明るく、「あの娘は最高だ。踊る姿が最高だ。腰の動きがたまらない。」
グループの中で2人は睨みあっている。

闘牛士側の取り巻きは、冒頭の「緑よ」の詩を元気に歌いだす。
「山を駆ける馬よ、緑よ、私の愛する緑色。(リフレイン)」
2つのグループは合流、中心でカルメンが酒場の亭主と踊りだす。
酒場の亭主はカルメンを連れ、闘牛士の方へ連れ立つ。カルメン、嬉しそうに闘牛士と踊る。
残されたホセは、氷が溶ける如くゆっくり2人に近づき、力づくでカルメンを引っ張る。
カルメンの怒りは炎のよう。
闘牛士がまた近づき、2人の間近でソロ。
グループの男性歌手の歌は、彼を称える内容。闘牛士はいかにもカッコつけた踊りをひけらかす。
「街に貼り紙が出ていた、闘牛の大会があると。
ロマ達が闘牛場に向かっている。闘牛が行われるんだ。
柳の枝が揺れるように、ああ、しなやかなその体。闘牛士達の登場だ。
髪にリボンを飾った男達。彼らが闘牛士だ。」

今度はホセのソロ。「(続き)荒々しい轟音が鳴った。山の大蛇が暴れるような轟音が鳴り響いた。」
怒りを押し殺すように大きな呼吸をしてそれを見ていたカルメンは、ホセのあとすぐに踊りだす。その目は2人の男を宥めるよりけしかけている。
ホセは走りだそうとするカルメンのあとを追う。
「死んでも行かせない。俺についてこい。」「嫌よ。」
「お前を脅かすのにも疲れた。」「なら、殴れば? でなきゃ行かせて。」
闘牛場内からファンファーレと喚声、「勝利だ!」。
歌劇《カルメン》ラスト間際の切迫した音楽と2人のオペラ歌手が激しく争う歌が聞こえてくる。
「悪魔め、最後にもう一度訊く、俺に従うか?」「お断り!この指輪あんたがくれたっけ?返すわ。」
「なんて女だ」
そして、オーケストラ伴奏で始まる良く知られた〈闘牛士の歌〉、その歌詞。
「闘牛士よ、身構えろ! 戦いながらも思い浮かべろ。お前を見つめる黒い瞳、恋がお前を待っている。」
その旋律を背景に、気味悪い対旋律が強調され、回復不能な2人を象徴する。
人々の嘲笑が聞こえ、その陰でナイフを抜くホセ。凍りつく空気。
一気に近づき、カルメンの胴を刺す。
オペラ最後の劇的音楽をつんざく悲鳴。ホセはもう一度刺す。
そして、力なく、「俺を逮捕してくれ。」
ホセの腕の中でカルメン天を見あげる。
「俺が殺した。ああカルメルン、俺の愛するカルメン。」
カルメン、床に倒れ込む。

下はTV画面を直接スマホで撮ったもの。
つい思う、それを上から見つめ腕を垂れるホセの姿は、バロック画家カラヴァッジョの《聖マタイの殉教》(*3)そっくりだ。
フォト

フォト

(*3) 制作1599-1600。サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会コンタレッリ礼拝堂蔵。

 突然の暗闇。

舞台にもう一度照明がつく。ホールから猛烈な拍手とブラヴォー。
全員一列に並び、そして主要ダンサー4人の礼。
さあ劇中劇は終わった。ホセ役のアルバロ・マドリードは舞踊団の監督役に戻る。
興奮したメンバー達、猛烈なスピードの手拍手に合わせ、客席に背を向けた白いシャツのマドリードとアンコールの短い踊り。
 再度暗転。

もう一度照明。冒頭の「緑よ」の詩の歌がゆっくりと哀切を籠め名残り惜しく歌われ、急激なアクセルをかけて全員ストップモーション。
音もなく不動のダンサーらの隙間を、カルメン役のエスメラルダ・マンザナスがゆっくりと抜けて前に出てくる、真っ赤な衣装はそのままに。
舞台前面に出た彼女のタップを印に全員がリスタート。ダンサー全員の手拍子に乗り、マドリードとマンザナスが極く短いアニマートのデュオ。
「緑よ」の歌が盛り上がり、そして次第に静まりかえっていく。
そして、ホセとカルメンの、こうありたかったであろう夢の如き抱擁。

 エンドの暗転。


2004年にガデス他界後もアントニオ・ガデス舞踊団は存続し、代表作《カルメン》《血の婚礼》《フラメンコ組曲》は世界で繰り返し公演されている。
 
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