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2025年10月14日13:00

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Dance Companyピーピング・トム《トリプティック》~2/3

(続き)

・第1パート〈ミッシング・ドア〉

男女の乗務員がいつものように事もなげに作業をしている。
右側のソファーにだらしなく座っている男がいて、その前の床を乗務員が拭くと雑巾に血のようなものがべっとりとつく。雑巾は時々乗務員の手から離れ勝手な動きをする。
そのうち、ソファーに座った男の白いシャツの胸の部分が血に染まっていく。
左側のソファーの脇にはうつぶせに倒れている女がいる。乗務員はその両足首を持って引きずっていく。従業員室の扉を開け、その向こうに彼女の身体をまるで荷物か何かのように放り込んでドアを閉める。
乗務員らの作業や表情はいかにも普通通りだが、やっている事は普通でない。
この大きな客船そのものが尋常ならざる状況下にある事をサジェストしているらしい。

そのサロンで、別の男女が抱き合って踊る。女のヒールは時々折れ曲がって、まるで床が揺れているような変な歩き方になる。

大地震のような揺れと音で、全部の部屋のドアの把手がガタガタ振動する。
男の客が把手を握って開けようとするが、いくら力を入れても開かない。
ソファーに座った女が脚を天井に向けて大きく上げ下げすると、ドアが開いたり閉まったりする。女の上げ下げのテンポと、ドアの開閉のテンポはリンクしているように見える。
女は開いたドアから中へするりと滑りこんでいく。男もその跡を追っていくが、目の前でドアはピシャっと閉じてしまう。

ダンサーらの動きは、いずれも想像を超えた極限的なもので、まるでサーカスかグランギニョールのようでもある。
フォト


・第2パート〈ロスト・ルーム〉

豪華なキャビン内、女性乗務員がベッドメイキングをしている。
そこへ2人の男女客が入ってくる。
激しい突風が吹き入ってきて、新聞やパンフレットの類と同じように彼らは吹き飛ばされ、ドアにしがみつく様は、他ならぬ彼らの身体パフォーマンスで表現している訳で、実にトリッキー且つコミカル。

風が収まり、客が服を取り出そうとしてクローゼットのドアを開けると、中から5~6人の男女がこぼれ出てくる。
フォト

やっとの思いで彼らを元のクローゼットに押し戻し、別のクローゼットのドアを引っぱると、また大勢の男女が飛び出てくる。
ドアの向こうの世界はワープしているのか?

しばらくして気がつくと、ベッドの掛け布団の内側がもぞもぞと動いている。
男性客がおそるおそる布団を触ると、反応して更に動く。
ついに布団を引き剝がすと、女の生首がある。ダンサーが演ずるちょん切られた首は、ベッド上を水平に蠢く。
フォト

客は怖気づいて布団を被せる。

布団はまた動きだす。
何処からか赤ん坊の声がする。
布団を上げるとそこにタオルにくるまれた赤ん坊がいる。それは世界各地の難民達の赤ん坊を彷彿とさせる。
女性乗務員は赤子を抱き上げて微笑み、あやす。

男女の客は抱き合い踊り始める。
彼らの踊りは、まるで引力から自由になったような不思議な動きとなる。ワイヤーは使っていない。どうやっているのだろうか?
フォト

また突風。
女性乗務員のユニフォームは赤ん坊と伴に吹き飛ばされ、下着姿になり、ガラス扉の外へ押し出される。赤ん坊はどこへ飛ばされていったのか?
外は雪が降りだし、女性乗務員が雪まみれになってガチガチ震えているのが分かる。上の写真の背景に女性乗務員の姿が見える。

男女の客はガラス扉の向こうにいる女性乗務員に気づき、彼女を導き入れ、また踊りだす。

クローゼットの中から音がする。
ドアを引くと、四つん這いになった初老の男がトランクを幾重にも背中に負って出てくる。
この男性は、豊橋でアマチュアのシニアキャストとして募集された人だろう。
彼は背中のトランクが重く苦しそうで、涙さえ流している。彼も行き場のない難民の1人か。
男の客は彼を室内へ引き入れ、一旦ベッドに座らせる。

ここで第2パートは終わり。
「休憩25分」の表示が出て、舞台転換が始まる。が、トイレに立つ訳にはいかない。
キャビンの壁や扉が外されていくが、トランクを脇に置いた男性はベッドに座りうなだれて泣き続ける。
舞台の四方にパイプが置かれ、その中にビニールシートが敷かれる。結果、浅いプールが設えられた恰好になる。
トランクとシニアキャストは次第に奥に導かれ、だが、そこでまだ泣き続けている。
舞台転換の作業が続く中、女性がマイクを持って現れ、バッハの受難曲(?)らしき音楽を底にした悲し気なオブリガートを唄い始めた。第39曲のアルトのアリア〈憐れみ給え、わが神よ〉かもしれないが…どうか?(*)
作業が終わり、歌も終わると、いつの間にかシニアキャストも奥へ引っ込んだ。

PLATの係員が、舞台に最も近い列の客にビニールの雨合羽を渡していく。水濡れを防ぐためだろうと想像された。

(*)PLATに問い合わせたところ、アナレナ・フレーリッヒの《 I was wrong about it all 》だとの事。


(続く)
 
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