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2025年08月26日11:00

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松本第1日目〜OMF オペラ《夏の夜の夢》��

(続き)

オーベロンも消えると、森はアテネからやって来た若い恋人達の場となる。
ライサンダーとハーミアは両思いの恋仲だが、ハーミアの父親(アテネの貴族イージアス)が認めてくれない。イージアスはハーミアにディミートリアスとの結婚を命じていて、この事はアテネの公爵シーシアスにも言上済み。当時の父権は絶対である。
ライサンダーは駆け落ちをハーミアに提案する。

2人がいなくなり、今度はディミートリアスとヘレナがやってくる。
ディミートリアスはハーミアに横恋慕していて、彼女を追い駆けてきたのである。
ヘレナの方はディミートリアスが大好きで彼にとりすがるが、ディミートリアスにその気はなく冷たい答え。

オーベロン(妖精は人間には見えない)はこの様子を高みから眺めていて、ヘレナに同情。ディミートリアスにも惚れ薬を塗ってやろうと考える。
そこへパックが帰ってくる。手には1本の花。例の「惚れ草」と見える。
オーベロンはパックを褒め、自らその汁をタイターニアに塗るつもり。
パックには次なる命令を出す。乙女がアテネの若者に冷たくされて悲しんでいる。その男の瞼にもこの汁を塗ってやれ。
パックは例によって詳しい話も聞かずに森の中へ飛んでいく。これが過ちのもとである。

また低弦のグリッサンドが行ったり来たりすると、妖精とも恋人達とも違う、村の無骨な男達(6人の職人)が森へやってくる。
彼らの付随音楽はコミカルなものが多いが、ブリテンは6人にもそれぞれ異なる音楽を創作している。
1人の男が言う、アテネのシーシアス公爵とヒポリタ女王の結婚式が行われるが、その席で芝居が演ぜられる事になった。多くの人々から提案が集まるだろうが、採用された出し物には褒美が貰える。俺達も出ようじゃないか。
彼ら、芝居には全くの素人だが、褒美に目が眩んでいる。
台本作家役のクィンスはもうタイトル迄考えている、『ビラマスとシスピー、最も悲しく、最も残酷な死を描いた喜劇』と、何だか訳が分からない。
クィンスは早速、役の配分を始める。
太っちょの機織屋ボトムは積極的。主役のビラマスを任される。
ふいご修理屋の若者フルートは、ヒロインのシスピーに。
フルートが女役に悲観的な態度を示すと、ボトムがじゃあそれも俺がやるなどと勝手な主張をして揉めるが、何とか6人の役どころが決まる。

右端が何かと主張の多いボトム。但しリール歌劇場提供の写真で、今回のキャストとは違う。
フォト

クィンスは台本を皆に渡し、今夜この場所で稽古するから覚えてこいと。
6人は森を出ていく。

配役を決める時に聞こえる単純でリズミカルなメロディ、気がつく人も多いだろうが、これはショスタコーヴィチ(1906-75)の交響曲第7番《レニングラード》第1楽章に出てくる戦争のテーマの部分的引用。
このフレーズは、第3幕で公爵が芝居の要望をする時にもちらっと現れる。

ブリテンは1960年、ショスタコーヴィチ(7つ歳上)のチェロ協奏曲第1番がロンドンで初めて海外公演された時彼と知り合い、隣の席に座わらせてもらってこれを聴いた。演奏会後には、ショスタコーヴィチにソリストのロストロポーヴィチを紹介された。その後、ショスタコーヴィチはブリテンの《戦争レクイエム》(1960-61)を「20世紀最高の作品」と絶賛、交響曲第14番(1969)はブリテンに献呈されている。
2人の心中迄は分からないが、おそらく深い絆で結ばれ、ショスタコーヴィチの交響曲第7番を単に好戦的音楽と表面的な解釈をしなかった、それだからこそ、ブリテンは本オペラにこの引用したと考えるべきだろう。

ブリテンには、一方、19世紀のイタリア・ヴェリズモオペラを戯画化してやろうという思いがあり、第3幕で行われるこの劇中劇で女装したフルートが熱演するシスピー狂乱の場は、ドニゼッティの《ランメルモールのルチア》のパロディとなっている。


ライサンダーとハーミアが再登場。森を彷徨って疲れた2人は休む事とする。
ライサンダーは一緒に床に入ろうと申し出るが、ハーミアは理性を保つように諭す。
結局2人は少し離れた場所で眠りにつく。

そこへパックが忍んできて、オーベロン王の言っていた「アテネの若者」とはこいつだなと思いこむ。
何故なら、恋人達は登場の最初から4人共パジャマのようなものを着ていて、それがアテネの若者達の定番と考えられたからだ。
パックはオーベロンから名前も容貌も聞いていない。しかし、観客は知っている、オーベロンが指示したのはヘレナに冷たい態度をとるディミートリアスの方だった。
パックはライサンダーの瞼に汁を塗り、任務終了とばかりに退場。

そこへ、ハーミアを探すディミートリアスと、ディミートリアスを追い駆けるヘレナがやってくる。
ディミートリアスが走り去ると、残されたヘレナはそこで寝ているライサンダーを発見し、彼を揺り起こす。
ライサンダーは「惚れ草」の効果で、目の前にいるヘレナを瞬く間に恋してしまう。今迄はヘレナに興味も示さなかったくせに。
彼は浅はかにもすぐさまその気持ちを口に出す。
ヘレナの方は、思ってもみない展開に、馬鹿にされていると思い込んで、怒って去っていく。のぼせたライサンダーはヘレナを追う。

しばらくしてハーミアが目を覚ます。
近くで寝た筈のライサンダーがいないため、ハーミアは彼を探して走っていく。
この4人の掛けあい、スピード感溢れる音楽展開の妙味。

ブリテンは男女4人の恋のドタバタを、モーツァルトのオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》の声の組み合わせで、見事なアンサンブルにした。

フォト

これもリール歌劇場提供の写真のため、キャストは今回と異なっているが、4人の着衣に注目頂きたい。
服も普通ではないが、ライサンダーとディミートリアスは、何とベッドを押してこの森にやってきた。
暮れようとしている深い森。大きな鏡が奥にあり、諍う4人の恋人達の内心や欲望もあからさまになる。

のち、第3幕を迎えると、森は朝を迎え、魔法が解け、4人は元の鞘に納まる。
そして、前夜の経緯などすっかり忘れ、それぞれ「宝石のようだ」と同じ歌を繰り返して互いを称える四重唱。ついうっとりする。

(続く)
 
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