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2025年08月01日14:00

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映画『木の上の軍隊』~2

(続き)

ある夜、安慶名は連合軍のゴミの中から缶詰を見つけた。
それを開けて山下の前に出したが、彼は唾を呑み込みながら食べるのを拒否した。日本兵たるもの、敵のお余りを食べる事など死んでもできない。最前線で苦しんでいる戦友達の手前、言い訳もできない、と。
安慶名は、山下に隠れ、こっそり缶詰を開けて食べた。
そして頭を捻り、日本軍支給の既に空になった缶に連合軍の缶詰の中身を移し、まだ日本製の缶詰の残りがあったと嘘をついて山下に差し出した。山下は手で掴み、夢中でそれを食べた。
あとでバレて安慶名は山下にさんざん殴られる。

日は瞬く間に過ぎ去っていった。
山下は暦の計算の仕方を心得ているようだった。

またある日、連合軍の兵士らが大勢焚火の周囲に集まり、大声で祝い、呑み、笑っているのを見た。
彼らが何をあんなに喜んでいるのか、2人は勿論理解できなかった。

翌日、2人はその場所に行き、鍋や飯盒などの中に彼らの残飯を見つけた。
残飯は随分たくさんあった。
こんなにたくさん残しやがってと、山下は狂ったように頬張った。前回とは態度が違う。
安慶名は山下の様子を見つめ何か言いたそうに見えたが、一緒になって食べた。口には出さないが、美味しかった。

ゴミの山の中から残飯を見つけられる日が続いた。
連合軍兵士の軍服を見つけ、それに着替える事もできた。
剃刀と鏡もあった。久しぶりに髭を剃った。
木箱の中からは、タバコの缶やヌード写真が載っている雑誌も見つけた。
2人のこれ迄に見せなかったニヤニヤした笑顔。
いつの間にか、2人は何となく会話が成立するようになっていった。

残飯はいつでも手に入るとは限らないと、拾ったトランクに入れ、近くの木の根元に穴を掘って隠した。

数日後、トランクを掘りだして開けると、中の食べ物がなくなっていた。
唖然として考えた、連合軍の兵士らがこれを見つけて食べる事などあるだろうか。
安慶名は日本語で「食べ物を持って行かないで」、そして、末尾に死んだ友人の名を書き、トランクの中に入れた。

しばらくしてトランクを開けてみると、日本語で返事が来ていた。「戦争は終わった、早く森から出てこい」、そう書かれていた。
山下は、連合軍の騙しに違いないと主張した、出ていったら殺されるぞ、と。
だが、その手紙のに書かれていた名は、死んだ友人の兄のそれだった。

安慶名はハブに噛まれた。
その毒のせいか、長い幻影を見た。
そこには元気な母や妹、近所の親友がいた。彼らは笑って安家名に話しかけてきた。母はボケていた筈なのに。

倒れている安慶名を山下は助け起こし、背中に担ぎ上げた。
安慶名は背後から山下に言った、もう帰りましょう、まるで子が父を諭すかのように。
だが、山下は言った、オレには帰るところなんかない、一体どの面下げて、と。

安慶名を地面に下ろし、山下は連合軍のゴミ捨て場を見に行った。
そこには伊江島の男がいて、暢気そうに缶詰を漁っていた。
山下は男に訊いた、戦争は終わったのか?
男は、これが堪らず好きでね、といやしく笑い、缶詰のフルーツをすすりながら言った、もうとっくに終わったよ。

安慶名は、ひとりガジュマルの木を降り、深い森を出て、2年間ずっと見たいと思っていた伊江島の海の方に向かって歩いて行った。
ゴミ捨て場から戻った山下は、安慶名がいない事を知り、彼の名を叫びながら、足跡を追って海岸の方へと歩きだした。

2人が森を出たのは1947年の3月だった。

今も伊江島には、日本軍の代わりに在日米軍の飛行場があり、島の面積の35%は米軍基地となっている。


監督・脚本 平一紘
撮影 砂川達則
美術 吉嶺直樹
照明 鳥越博文
衣裳 宮本まさ江
主題歌 Anly

出演 山田裕貴,堤真一,津波竜斗,玉代㔟圭司,尚玄,城間やよい,山西惇 他

2025年/日本。

スタッフの殆どと、主人公2人以外、脇を固めた俳優は皆沖縄県人である。
平一紘の当初の思惑は達せられた。

出演者の最後に書き加えた山西惇は、最後にゴミ捨て場に現れた男の役だが、初演舞台では山下少尉役を演じた。安慶名役は、藤原竜也が演じた。
 
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