『「そうです。ぼくはともすれば、いいものをつくりたいと思うあまり焦っていたような気がするんです。しかしぼくは、ひとつのものを生み出すのに、時間をかけて待つということを今度知らされたような気がするんです。頭の中に何かひらめくでしょう。
するとすぐに、ぼくはそれを製品にしてしまいたいと思う。そりゃあ、デザイナーにとってひらめきは大事だけれど、しかし時間をかけて、かもしだすことも大事なんじゃないか。
かもしだされたものには、たんなるひらめきによって作ったものとは、ちがったものがあるはずですよね。そのためには待つという時間が必要なんです。
電子レンジでは、本当の味が出ないでしょう。時間をかけて煮るということが、料理には必要でしょう。家具だって同じですよ。そう思うとね、ぼくはあなたにたくさんの礼をいわなければならないような気がして・・・・」』
(三浦綾子『果て遠き丘』)
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