「あなた、わたしたちは、人には捨てられましたが、神には捨てられませんね」 この妻の言葉に、私は、はっと我に返った。もう何もかもぶち止めようと思っていた私が、はっと正気に戻ったのです。狂わんばかりの懊悩が静まったのです。
ぬいの言うとおり、人には捨てられたが、神には捨てられていなかった。神はどんなことがあっても、決して捨てないお方だ。そう堅く堅く信じましたから、私は早速、聖書をひらいた。ロマ書の第八章に
<神もし我らの味方ならば、誰が我らに敵せんや>
という言葉が目に飛び込んできた。これには力をあたえられましたなあ。勇気を与えられましたなあ。立ち上がろうとする意欲を与えられましたなあ。
(三浦綾子『夕あり』朝あり)
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