仕事という字を見てみよう。仕(つか)えると事(つか)えると、二字とも、まさしくつかえると読む。仕事とは、つまり仕えることなのだ。働くという本来の字も見てみよう。にんべんに動くと書く。人のために動くこと、それが働くということなのだ。
わたしたちに、もし生きる意欲がなくなっているとすれば、それは適当な仕事がないからではなく、人につかえる、人のために動く気持ちが失われているからではないのだろうか。
生きているということは、動いているということだ。心臓がかすかにでも動いているうちは生きている。死ぬとは、全く動かないことだ。死ねば呼吸もとまり、心臓もまったく停止する。だが、生きていて死んでいる状態の人間がいる。それは、人のためには決して動かない人間だと思う。つまり、働くことのない人間の心は死んでいる、とわたしは思う。
〈三浦綾子『光あるうちに』〉
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