6/18(木)、シネマイーラ浜松で『オールド・オーク』(2023)を観る。
制作時87歳だったケン・ローチ(1936- )は、この映画を最後の作品にすると公表した。
『わたしはダニエル・ブレイク』(2016),『家族を想うとき』(2019)に続く「イギリス北東部3部作」に位置付けられる。
私はこの『オールド・オーク』が、多分ローチ10作目の鑑賞になると思う。
「オールド・オーク」はイギリス北東部のある都市の近郊の町に唯一残されたパブの名前。
古くは炭坑で栄えた町だが、30年前に閉山、舞台設定の2016年の今はすっかりさびれている。
冒頭、店主のT・J・バランタインは、傾いた看板の最後の「K」を直そうと、長い棒でつついている。
何度か繰り返し、ようやく真っ直ぐになったところで、店の中へ入る。が、ドアがバタンとしまると、その「K」はまたぶらんと傾いてしまう。
ハブの経営が上手くいっていないのを表している。
ポスターにはT・Jの隣に女性(シリア難民のヤラ)の姿があるが、彼女が登場するのはしばらくのち。
店内でビールを呑んでいる僅かな男女も、T・Jと同じ年頃、さえない風体で、口を突いて出るのは愚痴ばかり。
町にシリア難民がやってくる事となった。
政府から事前説明はなく、人口減少の激しい田舎町を選んで送りつけられた恰好。
T・Jは支援団体の友人ローラの手伝いで、空いた時間には車を運転し、受け入れ準備の手伝いをする。
バスで送りつけられた難民を見て、ただでさえ生活の芳しくない町民は面白くない。T・J含む支援団体が彼らを出迎える前で、難民を取り囲み、嫌がらせの言葉を投げつける男女もいる。
難民の1人、20歳代の女性ヤラは報道カメラマンを目指しており、町民達の反応を写真に撮る。
と、1人の男がヤラのカメラを取り上げ、放りだされたカメラは壊れてしまう。
後日、ヤラはT・Jのパブにやってきて、弁償をさせたいので、男の名前と住所を教えてくれと。
そのカメラは、ヤラの父親が、彼女の才能を見抜き、将来のためにと買い与えてくれた大事な物だった。
T・Jは男を知っていたが、ここでは衝突を避けるべく、知らないと答える。
T・Jはここがどんな町か話そうと、パブの奥の部屋にヤラを案内する。
壁には、繁栄していた頃の炭坑の写真がたくさん貼られていた。叔父が撮ったもので、T・Jの父親も炭坑夫として働いていた。
活気みなぎる炭坑と町。1951年の炭鉱事故、1984年の労働者のストライキなどが写された写真もある。その頃は労働者の連帯も活力があり、町民は生き生きしていた。
ストライキ前、T・Jも鉱山で働き始めた。彼は地域のリーダーにも育っていく。
海の下5kmも伸ばされた坑道の落盤事故で父は死に、その補償金で母はこのパブを購入した。
店は繫盛し、T・Jが継いだが、炭坑が閉山、母も死んだ。
町の活気は失われ、妻とは離婚、一人息子も離れて、今は寄り付かない。
壁の写真から始まって、T・Jとヤラの会話は深まり、2人は歳の離れた友人となった。
ヤラは今20歳代前半。レバノンの難民キャンプで国際ボランティア達と活動し、英語を学んだ。ヤラにカメラを買い与えた父は仕立屋で優れた職人だったが、当局と対立し、シリアの刑務所に収監されている。
今回の難民強制移送では、ヤラは母と妹達と一緒にこの町へやってきた。
T・Jはふと思い付き、奥から叔父のカメラを数台持ちだしてきて、これを売却すれば、ヤラのカメラの無理代になると勧めた。
ヤラは遠慮しつつも微笑んで、「シュクラン」。
T・Jは、マラという小さな犬と暮らす。彼が父の死によって人生を諦め海に入ろうとした時に出逢った、今はかけがえのない家族だ。
パブにやってきて一杯呑み、仲間とさまざまな不満を吐き出し合うのは、まあパブの機能の一つでもある。
勿論、難民受け入れに反対する人達もやってくる。中にはT・Jと幼な馴染みもいる。酔っぱらっては、しっかりとした確認もせず、難民らとのトラブルを言いふらす。
商売上差し障りもあり、T・Jは放っておく事も多いが、たまには注意をする事も。
そんな連中の一人チャーリーが、T・Jに言う、難民に対する抗議集会をしたい、ついてはパブの奥の部屋を貸して欲しい。
T・Jは、奥は何十年も使っていないし設備が壊れているから無理だと答える。
(続く)
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