当たり役の「女の一生」を、杉村さんは数え切れぬほど演じてきたわけだが、「舞台の袖に立って出番を待つ時、わたし、恐ろしくてからだがふるえるのですよ」
と言われた。何という謙遜な言葉であろう。岩永先生を始め、真に偉いと言える人は、毎日このような畏れをもって、馴れることなく生きていられるのだ。この人たちの毎日は、どんなに緊張に満ちた、心豊かな生活であろう。
「今日という日には、誰もが素人だ」
という言葉を私は好むが、「おそれおののく」ことが出来るのは、謙遜で真実な初心にいきているからだろう。
(三浦綾子『忘れえぬ言葉―私の赤い手帖から』)
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