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2026年10月13日11:00

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名古屋行~2 名フィル第549回定期演奏会/愛知県芸術劇場コンサートホール

10/10(土)、文化のみち撞木館で深堀隆介展「金魚の唄」を観たあと、愛知県芸術劇場コンサートホール迄歩いて移動し、名古屋フィルハーモニー交響楽団の第549回定期演奏会を聴く。

[プログラム]

指揮 川瀬賢太郎

ジェイムズ・マクミラン《ブリタニア》
マックス・ブルッフ《スコットランド幻想曲》
 ヴァィオリン独奏 山本知重
 ハープ独奏 景山梨乃

〜休憩〜

ヨハネス・ブラームス 交響曲第2番

◆ジェイムズ・マクミラン(1959- )《ブリタニア》(1994)

マクミランは英国スコットランド出身の現代作曲家。
形式的にも内容的にも実に多様な音楽を200曲以上も書いている。
・オペラまたは音楽劇:6曲。
・オーケストラ曲:47曲。内交響曲5曲,協奏曲18曲。
・合唱曲:108曲。
・室内楽曲:37曲。
・声楽曲:6曲。
・ピアノ曲:10曲。
他

信教はカトリック。信仰に基いた宗教曲,合唱曲だけでなく、宗教とスコットランド民謡の要素を融合させ、現代音楽でありながら親しみやすい作品も多数書いている。
但し、彼の創作の根底には精神性と政治性が両輪として存在する。したがって、宗教曲も単純でなく多層性がある。管弦楽のための《ブリタニア》もそうした性格を持つ。

本曲は、ブリティッシュ・テレコムが英国オーケストラ協会と共同で起ち上げた大規模なクラシック音楽委嘱プロジェクトのために書かれた。
このプロジェクトは愛国的な表現の発信もその目的に持っていた。
ところが、《ブリタニア》は、煽るだけでなく、愛国心を揶揄する側面も有する。
例えば、トマス・アーン作の愛国歌《ルール・ブリタニア》やエドガー・エルガーの序曲《コケイン(ロンドン子気質)》の旋律など、伝統的な愛国的音楽を引用しながら、それらを皮肉や風刺を交えたコラージュとして再構成する。それにより、明るい筈の愛国歌の断片が、荒々しい響の中に投げ込まれ、予測不能の狂詩曲的世界に仕上がっていく。
愛国心はともすると排他的で偏狭なものになる傾向があるが、マクミランはそれに立ち向かい、愛国心とは一体何か?それを聴衆に突きつけもする。
13分程度の曲だが、複雑で多様性を持った曲である。
特に20種近いパーカッション(タクシー・ホーン,ダック・コール等含む)がこうした役割を担っていて、大変に面白い。

マクミラン、私は今回初めて聴いた。

◆マックス・ブルッフ(1838-1920)《スコットランド幻想曲》Op.46 (1879-80)

ブルッフの最も有名な作品は何と言ってもヴァィオリン協奏曲第1番(1864-66/改訂1868)だ。その魅力はやはり旋律性、歌である。
だが、ワーグナー(1813-83)らの進歩的な動きによって、旋律重視のブルッフは保守的作曲家と見なされるようになっていく。そこで、ブルッフは民俗音楽への接近と興味を深め、自分のスタイルにとって一つの光明と捉えるようになる。
ブルッフは2匹目のドジョウを狙って1877年にヴァイオリン協奏曲第2番を作曲するが、活動の拠点であったドイツのボンでさえ評価を得られず、彼はボンからベルリンに移住する。
この頃ブルッフはたった2曲しか作品を書く事ができず、うち1曲が《スコットランド幻想曲》である。
同曲完成の1880年、彼は遂にドイツを出て渡英、リヴァプールフィルの首席指揮者となり、1881年、そこでようやく《スコットランド幻想曲》を初演する事ができた。

タイトルの通り、この曲にはスコットランドの民謡が多数散りばめられている。
とは言っても、実はブルッフはスコットランドを訪れた事はなく、18~19世紀初頭にかけて編纂された『スコットランド音楽大全』なる曲集からネタを得たのである。
初演は好評を博したが、年と伴に次第に忘れられる事となる。
その後、この曲が世界的に知られるようになるのは、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-87)が各地で愛奏し、1947年には世界初録音した事による。
私もハイフェッツ演奏、マルコム・サージェント指揮、ロンドン新交響楽団の1961年録音CDを持っていて、幾度も繰り返し聴き、この曲を愛した。
本曲を名フィルのプログラム上に発見した時には嬉しかった!

曲名は正式には《スコットランド民謡の旋律を自由に用いた、管弦楽とハープを伴ったヴァィオリンのための幻想曲》という。
今回のヴァイオリン・ソロは、名フィル特別客演コンサートマスターの山本友重(1969- )。
そして、ハープは、2023年迄東京交響楽団の首席ハープで、現在は読売日本交響楽団ハープ奏者の景山梨乃(1990- )。世界のハープ賞を受賞してきた。
山本友重は、体格の割には心優しい音で演奏をスタート、流れに任せぬ抑制の効いた音と構築で静かな感動を呼んだ。
第1と第4楽章で特に目立つハープとの掛け合いは、2人で伸びやかな歌を聴かせ、心に染み入った。

フォト


アンコールで山本は、ヴァィオリン奏者で作曲家でもある大谷舞(2000- )の《Face Up》を演奏。
大谷はケルト音楽との出会いからヴァィオリン奏者となったとの事で、《スコットランド幻想曲》から親近性を感じさせる選曲だった。

◆ヨハネス・ブラームス(1833-97) 交響曲第2番ニ長調Op.73(1877)

今回のレポートでは、前の2者に力点を置き、ブラームスは簡単に済ませたい。
私は4曲の交響曲の中でこの第2番が一番好きなので、《スコットランド幻想曲》も加わった今回のプログラムは大変にワクワクした。

4つの楽章が全て長調だが、第2楽章などところどころの転調で、ブラームスらしい寂寥感や陰影が現れる。
第3楽章ではオーボエなど木管の歌が、チェロのピツィカートに乗り、心地好い。
第4楽章は次第に高揚し、ピウモッソのコーダでは金管が華やかに鳴り響く。

開場中から大きなブラヴォーが叫ばれ、ホールが一体感で熱くなった。


[付記]
 席:1階第4列15番。

[参考]
YouTube
・マクミラン《ブリタニア》
 指揮 マンフレート・ホーネック
 演奏 hr交響楽団フランクフルト放送交響楽団
 収録 2018.3.23/フランクフルト

CD
・ブルッフ《スコットランド幻想曲》
 指揮 マルコム・サージェント
 Vn ヤッシャ・ハイフェッツ
 演奏 ロンドン新交響楽団
 録音 1961
・ブラームス交響曲第2番
 指揮 ウォルフガング・サヴァリッシュ
 演奏 ロンドンフィル
 録音 1989

パンフレット
・「名古屋フィルハーモニー交響楽団2026-27 SEASON」
 執筆 「曲目解説」小宮正安
    「コラム」『重荷を降ろした後のドラマ』同
 発行 2026.10.9、名古屋フィルハーモニー交響楽団
 
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