mixiユーザー(id:3341406)

2026年06月13日23:45

136 view

アンドリュー・ワイエス展/東京都美術館100周年記念~1

東京ステーションギャラリーでカール・ヴァルザー展を観たあと、「八重洲北食堂」で昼食をとり、京浜東北線で上野へ出る。
東京都美術館では開館100周年記念としてアンドリュー・ワイエス展を開催中。

フォト

・会期 4.28~7.5

20世紀のアメリカ具象画を代表するアンドリュー・ワイエス(1917-2009)は、第2次大戦後に脚光を浴びた抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップアートといった潮流から距離を置き、ひたすら身近な人々と風景を描き続けた。
といっても、眼の前にある物をただ再現するのではない、作家の内面世界がそこには隠されている。
ワイエスの作品には、窓やドアなど「境界」を示すモチーフが数多く登場する。
それは、極く私的な世界、生と死、そうしたものとつながる通路でもある。
今回のワイエス展は、その「境界」の表現に着目している。

アンドリュー・ワイエスは1917年7月12日、挿絵画家ニューウェル・コンヴァース・ワイエスの5番目の子としてペンシルヴェニア州チャッズ・フォードの自宅で生まれた。幼時より父の手ほどきを受け、若くして頭角を現す。
父の教育法はかなり強圧的なものであったらしい。

ワイエスは生涯に亘り故郷ペンシルヴェニア州(*1)と、夏季を過ごしたメーン州(*1)を拠点にし、殆ど外へは出ず、身近なものを精緻に描き続けた。アメリカでは国民的画家として高く評価された。
日本での人気も高く、1974年に初のワイエス個展、1990年にヘルガシリーズ展、2008~09年に「ワイエス〜創造への道程」展(*2)、ちょうど同展開催中の2009年1/16に彼は老衰のため亡くなった。

(*1)ペンシルヴェニア州とメーン州については中日新聞5/24サンデー版参。
フォト

併せて、ワイエス略年表も同紙記事からスクラップしておく。
フォト フォト

フォト フォト

フォト

(*2)「アンドリュー・ワイエス〜創造への道程」展については、以下レポート(2009.2.18記)参。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1094005864&owner_id=3341406&from=list_diary_search

菊川市常葉美術館で行われた「アンドリュー・ワイエス水彩・素描展」のレポート(2006.10.28)も参考迄。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=254362087&owner_id=3341406&from=list_diary_search

1990年に池袋のセゾン美術館(現存せず)で開催されたヘルガシリーズ展も私は観ているが、その時mixiはまだ存在しておらず、無論レポートもない。

今回の展覧会は全4章で構成され、約100点が展示されているが、内10点が日本初公開である。
以下、章毎にレポートしていこうと思う。

◆第1章「ワイエスという画家」

ワイエスは、アメリカ美術の中でどう位置づければ良いのか、仕分けの難しい独自世界を作ってきた。
本人もそうした意識を持たず、まるで私小説のように描き続けたと言っていいかもしれない。しかし、その私的世界の中に普遍的なものが存在するところにワイエス作品の本質がある。

《冬の野》(1942)
フォト

ワイエス25歳の作品。本邦初公開。
ペンシルヴェニア州チャッズ・フォードの自宅近くで凍死したカラスを発見、アトリエに持ち帰って精密にスケッチをし、広大な枯れ野の中に置く構図を取った。視点は地面すれすれ、いわゆる「虫の視点」である。焦点がカラスの遺体にも遥か遠方の家や木々にも合っていて、窮屈な写実に息苦しさを感じる。
冬間近な晩秋、枯草、暗く雲の厚い空、身体虚弱だったワイエスは若いうちから死に強く捉われていたようだ。

ワイエスの言葉、「私は冬と秋を好む。風景の骨格を感じられるからだ──その孤独、冬の死せる感覚。何かがその下で待っている、物語のすべてはまだ見えていない」。

◆第2章「光と影」

ワイエスは光と影を巧みに用いて絵を描くが、それは「生と死」という人が逃れられないものと向き合った結果として、自ずから画面に表れた。
彼が生と死を強く意識したきっかけは、1945年、父と3歳の甥が乗った車が列車と衝突事故を起こし、2人を亡くした事にあった。
更に1950年、イエスは、肺結核のため片肺切除の手術を受けたが、その最中、一時的に心臓が止まるという経験をし、死をより身近なものとして意識するようになった。
これらによってワイエスの作品の根底には、「世の無常」とも言うべき情・哲学が流れるようになる。
ワイエスが日本人に人気があるのは、こうした背景があるからかもしれない。

《洗濯物》(1961)
フォト

ペンシルヴェニア州チャッズ・フォードの実家の裏と、物干しロープに棚引く洗濯物を光と影の強いコントラストで描いている。
ついさっき迄妻ベッツィ(1940年結婚)がここで元気に作業をしていたろう。
今はその声も聞こえず、藁編みの籠の陰に小さな犬が静かに寝そべっている。
日常の何でもないもの、その動静にワイエスの関心は向いた。

(続く)
 
4 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年06月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930