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2025年12月09日13:00

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映画『グランドツアー』~2

(続き)

上海に上陸すると、またモリーの電報が待っていた、「到着する。すごく会いたい。M」。
エドワードは長江を遡る船に乗り重慶へ。
着くと車夫達を雇い山に分け入り、更に成都へと向かう。
一夜を明かし、気がつくと車夫らがいない、エドワードの荷物も消えている。

彼は自称「成都の領事」という男に助けられた。
連れていかれた男の住宅は荒れ放題だが、現地の人夫達が竹材を運び込んで修繕を施そうとしている。
夕食の席で、エドワードはモリーを「世界一頑固な女だ」と愚痴をこぼす。
翌日、男は、現地の老人を連れて成都を案内する。
竹林に入ると、パンダが2頭、上の方で丸くなっている。
男はササの上に横たわり、パイプのアヘンに火を点け、自分は1日7服かそこらだが、この老人は40服も吸うと言う。
老人は笑みを浮かべ、横になり黙ってアヘンを吸う。
エドワードも1服貰い、横たわって静かに目をつむる。

ここで場が展開し、以降、エドワードを追跡するモリーの旅をカメラは追い駆ける事になる。

遡るが、ラングーンのラッフルズ・ホテルで、モリーはエドワードの置き手紙を受け取る、「突然の仕事でラングーンを離れる。次の船でロンドンへ帰れ。すまない、愛している」とある。
モリーは悲しむどころか、文面を見てふきだす。
彼女の旅にも様々な事件が起きて、それでも気丈に微笑みを浮かべつつエドワードを追う。決して諦める事はない。

ゴメスは当初、2人の婚約者の追い駆けっこと20世紀初頭に流行したグランドツアーを結びつける事だけ定め、脚本は自らグランドツアーのルートを辿りながら書いていこうと大らかに決めていた。
実際、ゴメスらは2020年にグランドツアーの旅に出て、映像(多くはモノクロ)と音声のフッテージを撮りだめしつつ、それを見ながら脚本をスタートした。
勿論この時点では、映画のロケーションは最終決定していない。
撮りだめしているのはコンテンポラリーの映像・音声(ドキュメント)であり、物語(フィクション)の時代は1918年である。勿論フッテージの映像や音声がフィクションにそのまま使えるとは思っていなかった。

しかし、グランドツアーが日本に至り、日本のフッテージをほぼ済ませたところでパンデミックが起こった。中国に渡航する事は諦めざるを得なかった。
クルー本体はポルトガルへ帰り、中国にいるクルーとリモートで合議しつつ、フッテージの続きを撮らせた。

2人の主人公の物語部分は、グランドツアー先でなく、リスボンとローマのスタジオで制作を進めた。

ゴメスは、ある日、フッテージの映像・音声と物語を合体させてみる事を思いついた。いつという事は明確でないが、パンデミックの出口が見えない中と言っていいかもしれない。
過去と現代、現実と幻想、都市と自然、カラーとモノクロ、シリアスとユーモア、熱情と倦怠、逃げる者と追う者、さまざまなコントラストが映画の中で不思議なタペストリーを織りなす事となった。観客が観聴くのはその編み合わされたタペストリーであり、ゴメスの言葉を借りれば「ミスマッチの交響曲」である。

モリーは中国で身体を悪くし、危険を顧みず長江を上流へと遡るが、嵐に遭遇して川に投げ出されてしまう。
何とか助け出されたモリーはゆらゆらと歩き続け、ある竹林のササの上へ倒れるように横たわる。
その竹林には記憶がある、エドワードがしばらく前にアヘンを吸って横たわった場所だ。
エドワードはその後何処へ行ったのか。
顔色の悪いモリーはゆっくり目を閉じ、そして、遂に呼吸も途絶える。
物語の2人は、空間的にも時間的にも、最後迄分断されたまま。

だが、しばらくすると、驚いた事に、モリーの斜め上方から煌々と照明が照らしだされた。
そこにはカメラや照明のクルーがいる。
映画の撮影はここで終わる。
スタジオセットの竹林で横になっていたモリーは再び目を開け、微笑む。


監督・脚本 ミゲル・ゴメス
脚本(共同) マリアナ・リカルド,テルモ・シューロ,モーレン・ファゼンデイロ
撮影 ルイ・ポサス,サヨムプー・ムックディプローム,グオ・リャン
編集 テルモ・シューロ,ペドロ・フィリペ・マルケス
美術 バビ・タルジーノ
衣装 シルヴィア・グラボウスキ
アソシエイト・プロデューサー 近浦啓(*) 他
 (*)近浦は、リモートで写真や動画を示し、日本部分撮影の旅程を提案、ゴメス他の撮影クルーを引率した。

出演 ゴンサロ・ワディントン,クリスティーナ・アルファイティ,クラウディオ・ダ・シルヴァ,ラン=ケー・トラン他

受賞 カンヌ国際映画祭監督賞,シカゴ国際映画祭シルバー・ヒューゴ監督賞/同編集賞(*),ソフィア賞最優秀作品賞/最優秀監督賞/最優秀編集賞(*),ゲント国際映画祭ジョルジュ・ドルリュー賞最優秀サウンドトラック賞,バリャドリッド国際映画祭ホセ・サルセド賞(最優秀編者)賞(*) 他

 (*)受賞経歴からも見られるように、この映画の第一の特徴は編集にある、まさに「編集の勝利」だと言って過言でない。

2024年/ポルトガル,イタリア,フランス,ドイツ,日本,中国(*)
 
 (*)各国の映像に付けられたナレーションは全てその国の言語が使われている。ゴメスの凝り性には驚かされる!
 
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