(続き)
この40歳展は、『般若心経』を11の部分に分け、毎年1つから2つ、10年かけて完成させた。
彼女のテンポはそんな感じだ。
こうして、『般若心経』は10歳よりいつも翔子と伴にあったのである。
以下、本展のために描き溜めた作品より。
2022年作。遊び心のある、力の抜けたまるこい字体。
2023年作。「無」の字が様々で、矛盾するようだけれども縄文風の古拙感が面白い。
次の3点は今年2025年作。
薄い墨を使った、軽さとスピード感のある見た事もない字体。
次の濃く太く悠然とした文字は、ハネがリズム感をもたらしている。
そして、『般若心経』のお終いは、落ち着き整然とした風情で、たっぷりとした余白が美しい。
翔子が新スタイルや革新性を志向しているという事は微塵もないだろうが、40歳になった今も、何の制約も受けず自由に空をはばたく。
今年は加えて『母への手紙』を書いた、これが最後の最後の新作という事になった。
これは2015年、国連でのスピーチに向けて、翔子が泰子に内緒で用意した手紙を4曲4隻に仕立てたもの。
何の衒いもない彼女の胸の内がまっすぐに見える。何と愛に溢れ、純粋な文(ふみ)だろうか。
「お母様が大好きなのでお母様のところに生まれてきました」には、胸が熱くなる思いだった。こんな幸せな事はないな、と。
私はここ迄で一度龍雲寺を出、昼食をとり、席上揮毫に間に合うよう12:30頃に戻る事とした。
(続く)
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