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2025年09月27日11:00

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映画『私たちが光と想うすべて』~2/2

(続き)

プラバはパルヴァティから相談を受ける、もう数十年も住んでいるアパートだが、高層ビルに建て替えるから出ていってくれと大家に迫られた由。
マノージにその話を持ちかけると、不動産に詳しい弁護士を紹介してくれた。
プラバはその事務所にパルヴァティを連れていく。
弁護士はそのアパートの部屋の所有権を明らかにする証しがあるかと尋ねる。
既に亡くなって永い夫が手続きをしたので分からないが、とにかく私はもう数十年そこに住んでいるという現実がある、とパルヴァティ。
しかし、弁護士からは書類を持ってくるようにと求められた。
プラバは一緒にパルヴァティのアパートに赴き、部屋中を探すが、それらしき紙は出てこない。
途方に暮れるパルヴァティ。
プラバは話を変え、炊飯器の事を彼女に話した。すると、彼女からも電話する事を勧められた。

その夜、また激しいスコールがきた。
アパートの窓を開けっ放しにしていたため、雨が激しく降り込んだ。
プラバは、慌てて窓を閉め、暗い床に座り込んで必死に雨水をタオルで拭いた。
アヌは起きてこない。
窓の下の棚の隙間から例の赤い炊飯器が見える。
炊飯器を腿の間に下ろし、プラバはスマホのキーを押した。呼び出し音がするが電話に出る人はいない。そのうち自動応答メッセージに切り替わってしまった。
プラバはスマホを切り、炊飯器を両の脚の間に抱え、泣いた。
観客は、映画が始まって以来、プラバの激しい表情を初めて見る。

翌朝、心の整理もできないままプラバは病院に出かけた。
目上である医者らへのアヌの態度はいつもと同じくだけたものだったが、アノージへの目つきはいやらしいとプラバは感じた。
あとから「色目をつかうなんて。だらしない人間は誰からも尊敬されない」、そうプラバはアヌを責めた。ムスリムの恋人の事も「皆の噂になってるわ」、と。

だが、言ったあと、アヌよりも傷ついたのはプラバ自身だった。
彼女はアパートに帰ってアヌの好物を夕飯に作り、戻った彼女に、酷い事を言ったと謝った。
アヌはプラバを許し、互いの心が近づいたと感じた。
いつものように狭い寝室で隣り合って寝る2人。
アヌは訊いた、「見知らぬ人と結婚できるもの?」。
プラバは答えた、「よく知っていると思っていた人が他人みたいになる事もある」。

パルヴァティは、アパートの大家を訴える事を諦め、郷里に帰るとプラバに話す、「仕事はすぐ見つからないかもしれないが、少なくとも家はある」。

プラバが病院から帰ろうとすると、アノージが呼び止めた。
夜の公園のブランコに座り、2人は少し話し合った。
病院との雇用契約が切れるので、よく考えた末、更新はしない事にした、そしてプラバに、一緒に来ないかとアノージは静かな声で誘った。
が、彼女はブランコから立ちあがり、彼に別れを告げ、歩き出す。

賑やかなガネーシャ生誕祭。
台車の上で輝く古代の神々。
ついて歩くムンバイの人々の群れ、その歌や踊り。
夜の街を彩る様々な色のネオンサイン。
祭りは何故か寂しく、別れの風情を忍ばせる。

ムンバイを離れ郷里ラトナギリに帰るパルヴァティは、プラバとアヌを誘った。何日間か自然の美しい田舎でゆっくり寛ぎ、またムンバイで頑張って、と。
3人は長距離バスに乗って南へ。
ラトナギリはマハラシュトラ州の海に面した村。
モンスーンは終わり、陽光溢れた青い空が青い海と接している。
ムンバイの生活の喧騒を忘れ、波と風、鳥達のさえずり、自然の音に3人は包まれる。

奔放なアヌは、実は恋人シアーズと示し合わせ、別便でここへやってきた彼とこっそり海辺の林で出会う。洞窟の壁に彫りつけられた古代インドの神々の下、おおらかな逢瀬を愉しむ。
その頃、浜では、魚網にかかって打ちあがった瀕死の男が見つかる。
漁師達によって引き上げられた男に、プラバは日頃の経験を活かし、心臓マッサージを施し、口伝てに酸素を男の口内に吹き込む。
繰り返すと、男はようやく息を吹き返した。
その様子を見た海辺の男女や老村医者は、プラバを男の妻と勘違いする。
プラバの介護でようやく目を覚ました男は、自分が誰か分からず、記憶もない風だった。
プラバの方から男に自己紹介をすると、男はその言葉を受け、自分がドイツから戻った彼女の夫だと言い始めた。そして、ドイツでの勝手な日々についてプラバに懴悔し、関係の修復を懇願した。
一体どういう事か?
死の淵から甦った男の幻想か、エロスを喚起されたプラバの妄想か、それともラトナギリの神秘現象か?
夢か現か倒錯か、観客には分からない。
プラバははっきりと男に言う、「あなたは私の夫ではない」。

陽が沈み、海の家にはカラフルな電気がいくつも灯された。

フォト

プラバとパルヴァティはテーブルの奥に座り、(結婚、家族、風習、宗教など、様々にままならぬ束縛や重荷を解き捨てたかのように)微笑んで、アヌとシアーズを迎える。
若い男女は手をつなぎ、海の方からやってきて、プラバ達の前に笑顔で座った。
海の家の少年は音楽をかけ、背後で楽し気に踊りだす。

「私たちが光と想うすべて」、その「光」とは何か?
「隣の家のランプのように」仄かに光るもの、それだけで夜は暖かくなる、少なくとも今宵は。
また陽は上り、私達は都会に帰らなければいけない、としても…


監督・脚本 パヤル・カパーリヤー
撮影監督 ラナビル・ダス
編集 クレマン・パント―
美術 ビユシュ・チャルケ他
衣裳 マキシマ・バス
音楽 ドリティマン・ダス

出演 カニ・クスルティ,ディヴィヤ・プラム,チャヤ・カダム,リドゥ・ハールーン,アジーズ・ネドゥマンガード

受賞 カンヌ国際映画祭グランプリ,アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞,全米映画批評家協会賞監督賞/外国語映画賞,サンセバスティアン国際映画祭異なる視点賞,女性映画ジャーナリスト同盟賞最優秀女性監督/脚本賞 他多数

2024年/フランス,インド,オランダ,ルクセンブルク
 
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