縁あって、このところ裁判所通いが続いていた。
決して被告ではなく、ましてや原告でもない。だからといって、阿蘇山が大噴火したわけでもなく、入間みちおファンでもないし、傍聴マニアでいるつもりもない。
関りある傍聴審判は、過失致死事案と大麻取締法事案。いずれも、執行猶予のついた判決までを見届けた。
裁判の傍聴はしご。
県内の地裁ではそのようなアクションは起こさないが、東京地裁は「傍聴マニア」が存在するほど、確かに人間模様の吹き溜まりで、あえてわかりやすい言葉を使うなら”面白い”。
テレビドラマや映画よりも、ナマの犯罪者を主役として、検察、弁護士、そして黒衣のカラスたちが丁々発止、事件を裁いていく。
関係する傍聴が短時間で終わると、縁もゆかりもない事件の法廷へ出向いて、見ず知らずの傍聴マニアと共に、裁判の行方を見守ってみる。
東京地裁は空港の手荷物検査のようなゲートを通って入館すると、タッチパネルが8枚ほど設置されていて、それを操作して何時から、どの法廷で、どんな事件が裁かれるかを検索することができる。
衆目の浴びる芸能人や話題になった事件は、決められた傍聴席を争い抽選を行うことになるが、通常の地裁事件程度なら開廷前にふらりと足を運ぶことができる。
嬉しいことに無料だが、スタンプカードはもらえない。
民事訴訟にも気になったので「貸金返還請求」や「建物不法占拠明渡事件」などを傍聴してみたが、傍聴席は貸切であるどころか、被告も原告も不在で、代理人が1人、裁判官と「どうする?」「もう、弁論書通りでいいよね」みたいな会話で進み、開廷1分程度で閉廷という事案もあった。
事件の詳細は記載できないが東京地裁民事法廷のある事案。これが★5.クラスの楽しさだった。
原告B(訴えた人)は、自称・訴訟マニアで「この地裁に100以上の訴えを起こしていて、今でも6件が審判中」と裁判長に語っていた。
途中、彼のスマホが鳴り響き、勝手に法廷から出て行って電話に出る始末。もはや、スタートから法廷崩壊。
Bは旅行代理店Jを使って、旧跡のある温泉地Kの老舗旅館Tを予約した。
温泉旅館でのひと時と、名所を訪ねるべく、意気込んで旅館Tへ出掛けたところ、

「反社(会的勢力)と思われるかたの入館はできません

」(B談)と、条令を基に宿泊を断われた。

曰く「俺は反社でもなんでもない

」と法廷で息巻いているが、どうみてもあれだ。
結局、フロントで宿泊を断られ「旅行そのものが散々な結果だった」(B談)ことを理由に、いくつかの訴えを起こす。
旅館Tに対しては「地元新聞紙」と「大手新聞紙1社」への謝罪広告と、慰謝料30万円。
旅行代理店Jには「ツアーの回復(もう一度、同じツアーを)」と慰謝料5万円。

「これが認められないなら、俺は旅館の前にいって10日でも100日でも拡声器でクソ旅館と騒いでやるからな

」。
こんなことを勝手に原告席でしゃべりまくっていた。
被告側は1名だけの出廷で、旅館Tの代理人。
旅行代理店Jは、欠席で書面による答弁書を提出済み。
裁判長が豚野郎、否、原告Bに「Jは欠席していますが、すでに答弁書を提出しており、謝罪には一切応じないとしています」と、伝えると、
原告B、法廷から傍聴人席に目をやって、スーツ・ネクタイ姿で座っている一人の紳士(川オス)を指さし、

「あんた、Jの関係者だろ。こっち、出てこいや

」と、叫ぶ。
いうまでもないが、無関係者だ。
傍聴席はスーツを着用した紳士(川オス)のほか、司法の勉強に来ているのだろうか、或いは、裁判所をデート代わりに使っているのか学生らしきカップル1組だけ。
マスクをつけた紳士は、ただ視線をBに向け、そして無表情。完全無視。
法廷の裁判長も「あれっ?」と、一瞬、こちらを向いたが、原告の意味ない発言に注意もせず無視。当然ながら、被告席の代理人も完全スルー。
原告の豚野郎、否、Bだけがイライラを募らせていた。
さてさて、裁判長と被告代理人の顔を見ていると、訴訟自慢しているBに対して呆れ果てた顔つき。
傍聴人の紳士は、冷静にメモ帳を開いて「可哀想に」と、同情の句を描いている。
高級老舗旅館へ行って、フロントで宿泊を断られ、それ以降の行動を知らないが、おそらく全国どこへ出掛けても同様の経験をして、同様に民事裁判へ訴え出ているのだろう。
一体、何が楽しいのか。この人の生き様。
中には勝って慰謝料をもらうこともあるだろうし、負け続けて訴訟費用を自己負担しているのだろうが、誰と出会っても、すべてをネガティブに受けて「訴訟する」と、息巻いている男一人、60歳。
価値観の違いといえばそれまでだが、なかなか寂寥感漂う一人の人生に出会うことができた。

「次回は被告からの弁論書による審理でよろしいですね」

「しかるべく」

「負けたら、クソ田舎のクソ旅館の前で、拡声器使って騒ぐからな」(←本当に言った)


「…(無視)…」

「では、次回審理は、えっと(ビジネスダイアリーをめくり)7月22日、この法廷でいいですね」
裁判長は、7月22日が祝日になったことを気が付いていないようだった。
マイミクのみんなも、紙カレンダーの祝日を今のうちに直しておいた方がいいはずだ。
本来なら書記官がこのあやまりに気が付き正すのだけど、原告があれなので、ほとんどやる気がない。
この続きの審判も見たかったけど、おそらく設定ミスによる次回公判の変更が関係者に通知されて、一般人には分からずじまい。
毎日、地裁に通って検索するほどヒマではない

(←少しだけならヒマはある)
■コロナで対面授業なし、学生提訴=明星大側に賠償求める―東京地裁支部
(時事通信社 - 06月17日 18:30)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=6558636
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