(承前)
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1月29日、すでに2週間も経ているのに心はまだオランダにいる。
スピードスケートで活躍するオランダ人に、少しだけ喜ぶ自分が恥ずかしい。
頑張れ、日本。頑張れ、レレレのおばさんたち。
アンネの家を1時間で退館し、11時19分、デン・ハーグ行きの急行列車に飛び乗った。
いや、飛び乗る前に時間があったので、ホーム隣接のトイレに駆け込んだ
ところが、セックスフリーの国柄のくせに小便するのに金が掛かる
細かなコインの持ち合わせなく、わずか70セントの利用料が払えず小便器にたどり着けない。
日本円にして108円。やはり、これも煩悩なのか。
結局、どうしたのかすでに記憶にないが、漏らしてはいない。
オランダの霞ヶ関、デン・ハーグ。
世界史で習ったハーグ条約で有名な地名だが、どんな条約なのかを知る由もない。
ランチをしていなかったので、目的地そばのケンタッキーフライドチキンで小休憩。
すでに、オランダ料理屋に入ることなど諦めて、ジャンクフード三昧で暮している。
そういえば、アムステルダム駅でできなかった放尿を、ケンタッキーで仇を打つ。
ところが、2階のWCには暗証番号の必要なボタンキーがついて締められている。
入れないショックで、ちょっとちびったかもしれない
近くに居た店員さんに、流暢(当社比)な英語で苦境を告げる。

「Oh,my pee

」
すると店員さん、得心した笑顔で4桁の番号をプッシュしてドアを開けてくれる。
助かった。
カウンターでランチセットみたいのを買ったら、フライドポテトが2つ付いてきた。
おそらく、こうだ。なんたって、相手は意味のわからんオランダ語。

「ほかに何かオーダーはありますか?」と、聞いてくれたのに、おいらの耳には、

「セットのサイドは何にする?」と聞かれたものと解釈している。
そうなったら、こう答えるしかあるまい。

「ポティト、プリーズ

」
必然的にLサイズポテトがトレイに2つ。
誰が喰うんや。
《ビネンホフ》
この館の中に国会議事堂や総理府がある。
確かに電灯が灯され、職員たちが出たり入ったり。
これまで神奈川県庁が世界一古い官庁なんだと信じていたが、恐るべしオランダ、デン・ハーグ。
13世紀に建築された建物内で働いている。
ビネンホフの門を抜けると、隣接する目的地・マウリッツハイスが厳かに佇んでいる。
この日、月曜日。多くの美術館や博物館が休館日なのだが、下調べによるとここマウリッツハイスだけ13時オープンと記されていた。
《マウリッツハイス美術館》
13時10分。正門前には警備員が1人、立ち入りを拒むかのように立哨している。
臨時休館だろうか。
それでも仕方がないと、諦めの境地にも立ちながら彼に「開いているか?」と聞いてみた。

「良く来てくれた。あそこの階段から地下へ降りて入ってくれ」
そんな感じで答えてくれた。言葉はわからなくても、ウェルカムの笑顔だったことは伝わった。
館内に入ると、そこはまさに迎賓館。
正面の階段を上りきった瞬間、ここには100分いることになるだろうと脳裏のどこかが伝えてきた。
日本で例えるなら目黒庭園美術館。
いや、それと比べることさえ犯罪的だ。
ルーベンス、ベラスケス、そしてカラヴァッジョ・・・苦手なルネッサンスとは対極のバロック画。
豪快な躍動感が写真からも伝わってくる。
あっ、この絵も知っている。レンブラントが描くドクターX。
レンブラントの大作を眺め、次なる展示室に足を踏み入れる。
ちなみに、ここまでおいらの影を追うものはない。
信じられるかい?
この部屋さえ、貸切だよ
オランダのモナリザ『真珠の耳飾りの少女』が、東洋の国からやってきたおやじ(←おいら)に笑顔を向ける。
また会えたね。
2012年、上野か六本木。満員電車のような混雑の中、まるで駅伝選手を応援するかのようなスピードで眺めて、立ち止まることなく通り過ぎる。
そして、6年後のこの日、彼女と1対1の出逢い
身体を180度振り向けると、そこには日本未公開のフェルメール風景画。
『デルフトの眺望』
10月、上野の森にやってくるフェルメールは8点。
すでに決定している作品が『マルタとマリアの家のキリスト』『牛乳を注ぐ女』『ぶどう酒のグラス』『手紙を書く婦人と召使い』。
残る4作品に何が選ばれようが、連日120分待ちの大行列は必至。
万が一、『デルフトの眺望』が来るなら、それは初来日なのだから、180分待ちになるだろう。
そして今、フェルメールの部屋にひとりきり
何度も、何分でも見つめていられる。
もしや、その絵画を持っていってしまうことさえ咎められないほどの自由さで、2つの作品と1つの贋作に酔っていた。
泣き出しそうだ。
いや、すでに泣いていたのかもしれない。首飾りはぼやけていたのだから。
ようやく隣の部屋には、遠足でやってきたのか、およそ中学生たちが先生と共にレンブラントを眺めている。
ゴッホや国立は想定していた中にあったけど、クレラー=ミュラーとマウリッツハウスは、それらをいとも簡単に飛び越えた。
バーンズ・コレクションやコートルドーで得た"自分の人生に美しい記憶の楔を打つ”体験を、2日続けて加えることができた。
マウリッツハイス、時計を見ると60分の至福。
I had enough
「何がなんでも、ハーグへ行け」と教えてくれた友人2人に、早く会ってお礼を伝えたい。

「ルルドの奇跡」70例目に認定、訪問の修道女が病気から快復
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