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2016年05月09日23:01

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『銃口』展に向けて その20

『銃口』展に向けて その20

小説『銃口』は三浦綾子最後の小説です。
作品中主人公の竜太は炭鉱町「幌志内」の小学校の教師として赴任しますが、その体験することの多くは、実は三浦綾子自身が16歳で代用教員として炭鉱町「歌志内」に着任して過ごした2年4ヶ月の経験が色濃く反映されています。

街の中を黒い河が流れ、
少年たちが感動すると「ウォーター」と叫び
教師は毎朝5時過ぎには学校に出勤し
全体が軍国調で染め上げられ
教育に勤しむあまり世界や社会の動きには疎く
知らず知らずのうちに時代と言う大きな流れに流されて行く・・

若い堀田綾子はこの時に心を尽くして生徒を愛し、手塩にかけて育んだのであるが、後年振り返ってこのように書いている。
− 「大きくなったらね、あなたがたも、み国のために死ぬのよ」
何と愚かな教師であったことだろう。
 わたしは生徒がかわいくてならなかった。だが、一体生徒がかわいいとは、どんなことであるのだろう。かわいい子に、戦争で死になさいと、何の矛盾も感じずに説く教師に、真の愛情があったであろうか。−(石ころのうた)

 三浦綾子は当初この小説ののタイトルを『黒い河の流れ』としていた(三浦光世『創作秘話』)がことから、歌志内(幌志内)を流れる黒い河の印象は強かったようである。

 ともすると「黒い河の流れ」の中で、自分自身は白かったが抗えずに流されたと考えがちな人間も多いであろうが、三浦綾子自身はおそらく彼女自身を、世界や社会のことを弁える知恵の無かった愚かな人間で、国家の推し進めるとおり戦争に協力してしまったことに対して呵責を感じたと思われます。

 同じく「石ころのうた」の中でこのようにも書いています。
− わたしは教育が何であるかを、全く知らなかった。わたしは戦争はいけないと教えるべきであった。人間は神以外のものを恐れてはならないと教えるべきであった。−

 『銃口』はこのような三浦綾子の一生の省察が籠められた作品です。是非6月14日から始まる『銃口』展にお越しください。
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