『自由雲』と書いて、「じゅん」と読む。
そんな不思議な空間が、東京都大田区池上に存在する。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1945846272&owner_id=8666179
(承前)
「じゆううん」→「じゅ〜ん」、青大将みたいな感じ。
客一人いない店内。
120デシベルで話しかけないと通じることのないバッドコミニュケーションなシチュエーションであったが、“これぞ、mixiネタ発見”というワクワク感が先立って、自由雲の魔界に身を投じることにした。
さて、おじいさん。
待っていても何一つ出てこないので、カウンターに立てかけてあるメニューを眺める。
まずは、ライブで叫んだノドを潤すために『ザプミアムモルツ 中ビン』
聞き慣れないビールの銘柄が書かれているが、とりあえずビールをオーダー。
クーラーボックスから取り出してきたビールと共に、カウンターに置かれたコップ。
じいさんが笑顔で『ザプミアムモルツ』を注いでくれる
ところが、ビールの栓を抜いていないまま注ぐものだから、何一つ、一滴すらコップには注がれない。

「栓が開いてませんよ〜」
隣から120デシベルの声。
気が付くじいさん、慌てて栓抜きを探し回る。

「オススメはなんですか?」
ダメとは判っていても、つい聴きたくなる。
同じセリフを3回ほど口にしたら、「ピザが旨いよ」と答えが帰ってきた。

「どのくらいの大きさですか?」
聞いてみたが答えはない。諦めて、とりあえず1枚オーダー。
足りなければまた追加すればいい。

「ピザはガス釜で焼くから20分かかるからね。ゆっくり、話しながら待っててね」
ぬるいビール片手に20分は意外と辛い。
しかし、そこは60年選手とあって、手際よくピザの生地を丸め、オリジナルソースを塗っている。

「何か、早くできるつまみはないですか?」

「何か、早くできるつまみはないですか?」
とにかく、じいさんには3回以上話しかけないと応対してくれない。

「チーズはんぺんなら早いよ」とスローモーな答え。
暇なので、店内をうろついてみると、セピア色のレアな写真を観ることができる。
《KITANACHELIN》
“汚なシュラン”=汚い店のくせに美味しい料理を提供する。
榮倉奈々ちゃんのサイン入り認定証を発見した。

「榮倉奈々ちゃん、来たんですか?」

「ほへ?」

「榮倉奈々ちゃん、ここに来たんですか?」

「「うちはね、この池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街にはね、靴屋、金物屋、本屋さんなんかがあったんだけどね、みんなやめちゃった。うちはね、池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街・・・」
また始まった。
どうやら、返答に困るとこのセリフが動き出すようになっているらしい。
ま、認定証に榮倉奈々のサインがあるってことは、彼女がこの店に来たのは間違いないのだから、ここまで苦労して確かめる必要もない。
それよりも、気になることを聞いてみる。
ピザの方はおそらくガス釜で焼いている最中だから、時間はたっぷりある。

「おじいさん、おいくつですか?」
180デシベル程度の音量で尋ねてみた。

「いくつに見える?」
そうきたか。
どう答えるのが正解肢なのか判断できないけど、とりあえず「80」などと、思ってもいない回答をぶつけてみる。

「フォッフォッフォッ」
嬉しそうだ。
実年齢より若く見られたのが嬉しいようだ。90にもなって。
結局、年齢は明かされずじまい。
マイミクさんからもらったサイトを探ってみると、どうやら90歳は超えているらしい。
おいおい、90のじいさんが夜のスナックに一人店長かい。
ガスや火を扱う仕事である。ちと、心配だ。
じいさんとのギャップだらけの会話を楽しんでいると、チーズの香ばしい匂いが立ち込めてきた。

「はい、できたよ

」
《チーズはんぺんと、手作りピザ》
ピザの生地はトースト風で、ミートソースにパンチが効く。

「美味しいだろ

」
じいさんが自慢げに尋ねてきた。

「うまいっす」

「ひゃい?」
聞こえねぇのか。

「美味しいですよ」

「はい?」
何回言わせるんだ。

「とても美味しいですよ〜」
これで、どうにか伝わったようだ。

「美味しいだろ。ソースはさっき作ったばかりのやつなんだ

」
それが言いたかったらしい。
結局、オーダーはビール、ピザ、そしてはんぺん。
申し訳なくて、このじいさんをそれ以上働かせたくないのだ。
きっと、誰もそう言う気持ちになるはずだ。
すると、ドアが開かれライブ帰りの男性2人が入ってきた。
昨年のライブ帰りに初めて自由雲を訪れ、今年も(心配になって)店を覗きにきたそうだ。

「じいさん、元気そうで良かったです」

「「うちはね、この池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街にはね、靴屋、金物屋、本屋さんなんかがあったんだけどね、みんなやめちゃった。うちはね、池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街・・・」
スイッチを押すな。

「何か、早くできるつまみはないですか?」

「何か、早くできるつまみはないですか?」
ふっふ、ざまを見ろ。じいさんには聞こえないさ。
じいさん、オーダーされたドリンクを作るのに精一杯で、ほかのことには見向きもしない。
仕方ない、ここはお助けマンしてやるか。

「チーズはんぺんが早いですよ。ピザは20分かかります」

「あっ、ありがとうございます」
すでに同志である。

「去年来た時は、ハイボールが出てくるまで15分掛かったので、もう覚悟はできてます」
さらに、ライブ帰りがもうひと組入ってきた。
こちらは、物珍しそうに店内をキョロキョロしているから初めての来店らしい。

「ビールに、ハイボール、あとピザと枝豆・・・」

「ちょいちょい、相手見て頼みなさい」

「あっ

」
新人ふたりが、目の前にいるじいさん見て驚いた。とんでもないところに来ちまった、のような。

「大丈夫ですよ、ピザは美味しいですから」
いつの間にか、じいさんのサポーターを買って出た。

「早いつまみは、チーズはんぺん。ピザは焼き上がりまで20分かかります」

「初めて来たのに、もうそこまで仕切れるんですね(尊敬)」
おいらを誰だと思ってるんだ。
カウンター内でのんびりと働くじいさんをサカナに、店内にたまたま集う6人が打ち解けて会話が弾む。

「おいくつなんでしょうね?ご存知ですか」

「教えてくれないんですよ」

「ネットをみたら、90歳ぐらいのようですね」
LIVEの感想も、それぞれに思いつくまま。
じいさんは、時たまオーブン窯を開けて焼き具合なんかを確認している。
もう誰も、面倒くさい注文をするものはいない。
もう誰も、次のドリンクが出てくるまで何分かかるかなんて気にするものはいない。
じいさんを中心にできあがった連帯感は、おそらくワレサ議長も羨むはずだ。
ようやく焼けてきたピザをスマホで映す若者たち。
きっと、彼らはこの時間をFaceBookに書き込むのだろう。いいなぁ、メジャーで。

「じゃ、そろそろ僕たちはこれで

」

「また来年、ライブに来たらここで会いましょう」

「それまで、じいさん、元気だといいですね」

「では、ごきげんよう

」
じいさんにチェックをお願いして、席を立つ。
じいさん、ビールの本数やオーダーされた商品をチェックしてそろばんを入れている。
暗算ができるほど注文数の少ない客だった。
じいさんが、もし少なく値段を間違えるようなら、お釣りはいらないからと、カッコをつけてやろう。
しかし、カッコをつけることなく正しい値段が伝票に示された。
じいさん、動きはノロイが、頭は鮮明らしい。
ドアを押して池上の街へ出ていく前に、楽しい時間をありがとう、と伝えたくなるほど愛すべきじいさんの店。

「「うちはね、この池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街にはね、靴屋、金物屋、本屋さんなんかがあったんだけどね、みんなやめちゃった。うちはね、池上で59年やっていてね、来年60年なんだ。ここの商店街・・・」
自由雲。
また、来年もこのセリフを聴きに行こう。
LIVEの余韻はいつの間にか消えて、じいさんの笑顔が印象に残る。
イザベルさんからいただいた情報サイト。
偉大な人すぎて、びっくりしたなう
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/30746

浮気してる訳じゃないんだ! スマホの画面を伏せて置く男子の本音を調査!
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=60&from=diary&id=3606117
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