ワイフさんが山形から帰ってきた
祖母の訃報に接し、取るものをとりあえず夜行バスに飛び乗ってからちょうど1週間。

「月曜に帰るから

」
キラキラのLINEが昨夜、来た。
ワイフさん不在となると、引きこもってしまうヘナチョコなおいらだが、これでようやく、羽根を伸ばして遊びに行ける。
落語の題目に『厩火事』という噺がある。
聴いたことがない人は、是非、何かで聴いて欲しいし、知っている人は“なるほど”と頷いて欲しい。
『雪の舞う庄内地方を14時過ぎに発った』とLINEがやってきた。
続いて、『19時ちょうどに東京着みたいだよ』。
当然、お迎えのリクエストと読み取れる。

『荷物、結構あるの?』

『あるよ

』
またぞろ、いなかの蔵から使わなくなったタワシでも持ってきたのだろう。
そもそも、いなかの蔵から使わなくなった何かを川崎に持ってきても、彼女はそれを使った試しがない。
ゴミを山形から川崎に移しただけであることが多い。
さて、おいら。
仕事を早々に切り上げて、東京駅に着いてから《入場券》を購入する
新幹線改札口で待っていればいいのに、25年間、新幹線や寝台列車のホームお迎えがマスト。
ほとんど、毎年里帰りするワイフさんを迎える作法は、四半世紀も前からこのように決まっている。
あらかじめ聞いておいた号車の前に立ち、車内から手を振るワイフさんに手を振り返す。
バカ夫婦、ふたたび。

「ただいま帰りました。ありがとうございました

」
しばらく家を空けたワイフさんは、いつも殊勝になる。
殊勝の賞味期限は、概ね2日だが、これもまた新鮮である。
手荷物を持とうと、手を出したが、渡されたのは新幹線で食べかけだったスイーツが入ったエコバッグ1つ。軽い。

「荷物、これだけ?」

「背中のザックだけ残して、あとは送っちゃった

」
おいらは、何しに東京へ。
入場券を自動改札に取られ、ろくな夕食場所もない東京駅をあとにして横須賀線。
品川辺りに勤めている長女ちゃんからLINEが届き、『何時頃、品川?』との質問。
LINEを返信しながら、山形でのあれやこれや。
品川に着くと、ホームから長女ちゃんが乗ってきて、帰宅リーマンで静かな車内の一隅に、不思議な家族連れ。
家に着き、洗濯物が畳んでないの、ゴミが分別されてないの、パンツが脱ぎっぱなしだ、と一頻り存在感をあらわした後、撮ってあったアメトークに騒がしさを取り戻す。
次女ちゃんが帰ってくる。

「おれ、おっかあ、早いね

」

「おやじ(←おいらだ)が早く帰って来い、っていうからよ

」

「えっ、そうだっけ?」

「言われなくたってわかってるわよ。ほんとは、もっとゆっくりしていたかったんだから

」
次女ちゃんを前にして、そんな強気なことを言っているワイフさんだが、ほんとは、明日の結婚記念日に間に合うように帰ってきたんだろ。
バカ夫婦、みたび。
というような日記を、マイミクさんたちが果たして期待しているのだろうか

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