絶賛するほどのものではないが、まぁまぁ楽しめる──
という巷の評判を確認するために観に行ったようなものだが、結論から言えば、そこそこ楽しめた。いろいろ物足りないところは多いのだが、テンポの良さと天秤に掛ければこんなもんかと納得。おなじみ名物プロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーによる頭を空っぽにして観るべき娯楽映画という点ではいつものとおり。
ニューヨーク魔法大戦争!という予告から、元ネタのファンタジアらしさの欠片もないなぁと思っていたら、ちゃんとお掃除大暴走のシーンがあったのはよかった。
ニコラス・ケイジが演じる魔法使いの弟子となる冴えないオタク少年には、ジェイ・バルジェルがキャスティングされている。彼は「ヒックとドラゴン」でヒックの声も演じている。自分は「ヒックとドラゴン」を吹替版でしか観ていないが、プレスコ(アフレコの逆に先に声を録音する)で演じたヒックの演技をトレースしたであろう吹替と、この映画の実写演技に共通するものを感じたのは気のせいではあるまい。
どちらもナード(オタク)が事件に巻き込まれ、大活躍の末に彼女をゲット、という物語であることも共通している。いまどきの言葉でいえば、厨二病妄想的設定の映画である。こういうナード映画というものは、一定の需要があるようだ。最も有名なのは「マトリックス」だろう。昼はダメリーマン、夜はスーパーハカーのキアヌ・リーヴスが、実は人類の救世主だったという正に中学生の妄想のような映画であるが、キアヌはイケメンなので世界中で大ヒットした。本当のナード映画というのは、大活躍する主人公がイケメンでないために女性客が入らず、同類の男性客によってカルト的人気を得るに留まることが多い。
「マトリックス」といえば、コロンバイン大学銃乱射事件の直接の原因であるかのように叩かれたものだが、思うに実際のところは「マトリックス」がなければ、より多くの銃乱射事件が起こったのではないか。こうしたナード映画で溜飲を下げることで、アメリカの厳しい学校内カースト制度の最下層であるナードたちはぎりぎり心の平和を保てたのであろうことは想像に難くない。なにしろ体育会系にあらずば人間にあらず、というのが90年代以前のアメリカン・スクールのイメージなのだから。
もっともビル・ゲイツを代表に、迫害されていたナード系の人間が経済的大成功をおさめることが多くなって以降、現在そこまで露骨なナード差別がされているのかどうか、正直自分は知らないのだ。ただ、おそらく体育会系よりはナード系の人間が多いであろう芸術肌の映画製作者は、過去のトラウマを払拭するかのようにしばしばナード映画の傑作を作ったりするものである。ダメ男たちが隠れた才能を発揮して活躍する定番ストーリー。その物語のヒーリング効果は、観客のダメ人間度に比例するという。そんな映画を、もちろんダメ人間を自覚する自分も非常に好む。
つまり、ここで言いたいことはこれだ。
早く「キック・アス」と「スコット・ピルグリムVS.ザ・ワールド」の日本公開を決めろ、あるいは公開しないならさっさとDVD発売を決めてくれ。まじで。
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