映画日記『ＰＩＧＧＹ ピギー』

２０２３年９月２５日（月）

『ＰＩＧＧＹ ピギー』（２０２３年）
監督：カルロタ・ペレダ
矢場町・センチュリーシネマ

スペインの田舎町が舞台。
肉屋の娘で肥満体の女子高生サラが主人公。
テレビのローカルニュースで、闘牛祭りに駆り出された狂暴な牛が逃げ出して、行方不明になっていると告げていた。
サラは店番をしながら、クラスメイトの可愛い子ちゃんグループがイケメン男子と遊びの打ち合わせをする様子を、店の中からながめていた。
きっと「わたしもあのイケメン男子のたくましい身体にさわってみたい」、とかなんとか夢想していたのだろう。
容姿のせいもあり、引っ込み自案のサラはいつもひとりぼっち、そのうえ３人組みの可愛い子ちゃんグループからは「ブタちゃん」呼ばわりされ、ひどいイジメを受けていた。
そんなある日、サラは可愛い子ちゃんグループが陰気な目つきをした男に拉致されるところを目撃してしまう。
警察に知らせなくちゃ、でもこのままあの３人が消えてくれれば・・・・心が千々に乱れるなか、サラはとうとう言ってはいけない言葉を口にしてしまう。
「ざまあみろ！！」

ルッキズムを背景に、「あなたならどうする？」と究極の選択を迫る１本。
私もまあ、そこそこのデブなので、サラといっしょに「ざまあみろ」と喝采したのだが、そういう映画ではなかった。
そこから映画は奇妙にねじれていく。
サラが、夢にまで見たセックスへの誘惑に何度もダークサイドへ堕ちそうになるという展開だ。
そして、ほんとうに驚いたことに、なんとも清々しいラストシーンになっていく。
引っ込み自案で親にも楯突くことのなかったサラが、はじめて自分の意思で行動し、困難を乗り越え、コンプレックスのくびきから自らを解放する。
ポスターのビジュアルから、てっきりＢ級のスプラッターだろうとおもって見に行ったら、なんとなんと、王道の青春映画だった。