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2023年01月12日12:47

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映画日記『破れ太鼓』

2023年1月9日(月)

『破れ太鼓』(1949年)
監督:木下惠介
京都烏丸御池・京都文化博物館フィルムシアター

初見。

裸一貫の土工暮らしから一代で財を築き、いまは土建会社の社長となった男、津田軍平が主人公。
派手なダブルの背広に身を包み、会社では社員にむかって毎度おなじみの苦労話をぶち、田園調布の豪邸には妻と男女6人の子どもたち、子どもといっても末弟が高校生ぐらいで、その他はすでに成人だ。さらには女中がふたり。
軍平が帰宅となれば、家族全員と女中たちが玄関に勢揃いして出迎える。
出迎えながら家族と女中たちは、どうか軍平の機嫌が良いようにと願うばかり。
軍平の機嫌悪ければ、雷鳴り止まず、誰も口出しできない。
家でも会社でも横暴なワンマンだった軍平だが、ついに妻と子どもたちが反旗をひるがえし、次男ひとりを残して、みんな家から飛び出してしまった。
追討ちをかけるように、会社の資金繰りが行き詰まり・・・・

正直なところ、そんなに面白くはなかった。
しかし、この年(1949年)のキネマ旬報ベストテンでは、『晩春』、『青い山脈』、『野良犬』に次いで第4位だった。
横暴なワンマンおやじを、戦前からの剣戟大スター阪東妻三郎が演じている。
第4位のなかには、あの阪妻がこういう役もこなすのか、という驚きが含まれていたのではと想像した。
『鉄道員(ぽっぽや)』(1999)で、かつて銀幕に血の雨を降らせたやくざ映画の大スター高倉健が、北海道の寂れた小駅の老いた駅長となってあらわれたときの感慨に似てるかもしれない。
そんなに面白くはないが、見どころはある。
実兄の木下惠介監督作品からやくざ映画やアニメまで、数多くの映画音楽を手がけた作曲家の木下忠司が、なんと役者として出演していた。
なにしろ、彼の役者ぶりを見たいとおもったのが、のこのこと京都まで出かけるきっかけだった。
で、その木下忠司だが、ちょい役かとおもっていたら、阪妻おやじの次男役でセリフもある。
なかでも、妻や子どもたちから見放され悄然とする封建かつ父権的な阪妻おやじに、お父さんには感謝してるけど戦争に負けて日本は変わったんですよ、といった意味合いのことをやさしく諭すような語りかけるシーンは、はっきり言って素人くさいセリフ回しだが、けっこう沁みるものがあった。
このシーン、ひ弱な次男から諭されて阪妻おやじが改心するというとても重要なシーンだ。
たとえ芝居のうえとはいえ、大スターの阪妻に面と向かって、いわば説教するようなセリフをはける若い役者なんて、そうざらにはいない。
そこで木下監督やスタッフが、役者としてのしがらみがない素人で、しかも監督の実弟なら、天下の阪妻も嫌な顔はしまいと一計を案じたのではと、勝手に想像してしまった。
その木下忠司が作った主題歌、のちに私が子ども時代に見ていた進藤英太郎が雷おやじに扮したテレビドラマ「おやじ太鼓」のテーマ曲と同じで、とても懐かしかった。
ということで、最初に「面白くなかった」と書いてしまったが、見て3日経つ今になっても色々な感想が浮かぶのだから、けっこう楽しんでいたようだ。




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