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2022年12月08日22:48

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映画日記『アイヌの結婚式 北海道沙流郡平取町二風谷』『チセ・アカラ われらいえをつくる』

本日はアイヌの伝統を記録した文化映画の2本立て。

2022年12月8日(木)

『アイヌの結婚式 北海道沙流郡平取町二風谷』(1971年)
監督:姫田忠義
今池・名古屋シネマテーク

明治維新以降、長きにわたる差別と偏見のなかで、アイヌの結婚式は廃れてしまったという。
ひとりのアイヌ女性が、自分の結婚式はアイヌの伝統にのっとったものにしようと思い立つ。彼女のまわりや親族は猛反対するものの彼女の決意は固かった。
彼女はきっぱりと言い切る、アイヌであることはなんら恥ではない。
嫁ぐとき女性は刺繍をほどこした伝統衣裳を男性の親族たちに披露する。
刺繍は、いわば「魔除け・厄除け」だ。
愛する家族を守るため、刺繍の技量を身につけることが、アイヌ女性にとって一人前の証だという。彼女も刺繍に精を出す。
アイヌの伝統衣裳とは、断じて、自称「保守」の差別主義者が言うような「コスプレ」ではないのだ!!
結納にあたる婚約の儀式が終わり、いよいよ結婚式の朝、彼女の母親が嫁ぐ娘の腰にこっそりと貞操帯を巻いた。
貞操帯といっても1本の縄、それを外すことができるのは夫だけ。
彼女は刺繍した衣裳などをむしろみたいなものにくるみ、背中へしょって嫁いでいく。
新婚用の家財道具や電化製品でトラックが何台も連なる名古屋の花嫁とは大違い。
からだひとつの嫁入りだ。
多くの出席者が見守るなか、神聖な結婚の儀式が終わると、あとは飲めや歌えの大騒ぎ。これは万国共通。
まるでフォークダンスかジェンカのように鶴をまねた踊りの列が続く。
とても素朴な踊りで、あれなら私でも踊れそうだ。
直前までは色々と反対もあったが、いざ始まると誰もが笑顔でうれしそう。
ふたりを、そしてこの昔ながらの結婚式を祝福している。
その様子を見てたら、不覚にも涙が出そうになった。
そして、宴もたけなわのなか、夫婦になったふたりは密かに抜け出し、寝所へと向かうのだった・・・・

これだけの内容で、上映時間がたったの33分。
それなのに、その33分がとても濃密で、しかもまったく古びていなかった。

傑作。


『チセ・アカラ われらいえをつくる』(1974年)
監督:姫田忠義
今池・名古屋シネマテーク

タイトルの「アカラ」のラは小文字。
アイヌ民俗学の泰斗・萱野茂が、伝統的なアイヌの家作りを次世代に継承するため、実際に若い人たちを指導しながら家を建てた。その記録。
先に見た結婚式とちがい、ことが建築ということで少々アカデミック。
そうはいっても、設計図などはもちろん無く、私のような素人には目分量としか思えない方法で、いとも簡単に藁葺きの家ができてしまうのには驚いた。
「いとも簡単に」と書いたが、もちろんそこには長い年月をかけた先人の知恵と工夫が満ちている。
失礼ながら、一見すると藁葺きの掘っ立て小屋だ。
しかし、その家が雨露だけでなく、アイヌの人びとを厳しい北海道の風雪からも守り続けてきたのだから、たいしたものだ。
それと、にわか縄文ファンのひとりとして、家作りの際、なによりも囲炉裏を大事にするというところが縄文時代からの伝統だろうとおもった。

こちらも貴重な映像だった。



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