2022年6月24日(金)
『ベイビー・ブローカー』(2022年)
監督:是枝裕和
伏見・ミリオン座
うーん、いまいち。
撮り方が上品なせいか、まったく弾けなかった。
『丑三つの村』(1983年)
監督:田中登
名駅・ミッドランドスクエアシネマ
ご存じ「津山三十人殺し」を下敷きにしたバイオレンス殺戮映画。
ご存じといっても、どういう経緯で三十人殺しが起きてしまったのか、じつは何も知らなかった。
映画なのでフィクションが盛り込まれているのだろうが、おおよそのことは分った。
時は昭和10年代、ところは中国地方の山あいの村。
この村に住む祖母の手で育てられた秀才青年が、結核のために兵役検査で不合格になってしまう。
病のために一日中ぶらぶらしていることから村の男衆からは除け者にされ、それまで夜這いの相手をしてくれていた村の女たちも手のひらを返したように彼を拒絶した。
村人たちの冷たい視線の中で、しだいに孤立していく青年は密かに銃器を集め、たったひとりの兵士となって戦うことを決意する・・・・
初めて見たが、凄まじい。
事件や犯人についての解釈はいくつかあるとおもう。
本作は排他的で底意地の悪い村人たちが、日本という国のたとえのように見えてならない。
日本という国が内部に抱え込んでしまった「嫌らしさ」に、日本軍兵士になれなかった落ちこぼれが復讐を企てるという映画だ。
ことの善し悪しは別として、というより悪いに決まってるが、詰襟の学生服、足にゲートルを巻き、頭の両脇に懐中電灯を装備し、胸にナショナルの携行ランプ、腰に日本刀を数本差し、手に連発銃をとる、そんなテキパキと軍装していく青年の姿に、なぜか見てる私も手に力がこもってくる。
孤立する青年を演じた古尾谷雅人がすばらしい。
礼儀正しく誠実だった青年がしだいに狂っていく。
そして、村の女たちを演じた、池波志乃、五月みどり、大場久美子に田中美佐子たちの体当たりシーンが『ベイビー・ブローカー』のうっぷんを晴らしてくれた。
傑作。
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