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2020年01月06日23:43

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映画日記 『読まれなかった小説』

2020年1月5日(日)

『読まれなかった小説』(2019年)
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
静岡市・シネギャラリー

昨年見逃した1本。
3時間の上映時間に少々ひるむ。
ちゃんと起きているか心配だったが、主人公と有名作家が論じ合うシーンでうつらとなっただけで済んだ。
とにかく撮影がすばらしい。
美しい映像を見てるだけで、時間が経っていく。
主人公の女ともだちの長い黒髪が、風でゆらゆらと巻き上がるところなど見事だ。
ときおり挟まれる望遠レンズのショットも効果的。

トルコの片田舎に住む、小説家志望の青年・シナンが主人公。
シナンの父親はかつて世間から尊敬された教師であったが、いまは競馬に溺れ借金生活だ。
そんな負け犬のような父親をシナンは疎んずる。
シナンはやっとのおもいで、書き上げた小説を自費出版し本屋に並べてもらったが、一冊も売れなかった。
母と妹にも手渡したものの、読んだ気配がない。
手痛い現実に、シナンは意気消沈する。
ところが・・・・

ぎくしゃくとした父親と息子が、一冊の本をきっかけに、心を通わせることになるという話。
ひとことで言えばそれだけだが、3時間の中には文学論や宗教論、歴史や政治状況や婚姻をめぐる因習など、多岐にわたるエピソードが盛り込まれていた。
エピソードのどれひとつ、私の知識や能力では手に負えないが、どれひとつ欠けても本作の魅力が失われてしまう。
予告編にトルストイやドストエフスキーに捧げる、みたいな宣伝文句が出てきたが、たしかに大長編小説のような趣きがあった。

ラストで、木に吊るされたロープの秘密が明かされる。
どうみても首吊り用にしかみえないロープが、未来への希望だったという逆転に、深く感銘した。

どこまで理解できたか、心もとないが、遠出をした甲斐があった。


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